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ノワール小説『不夜城』でセンセーショナルなデビューを飾った馳星周が、背徳な世界を真正面から描いた初の中篇集『M』

夜の世路に生きるアンダーグラウンドな男たちをダイレクトに描き、「不夜城」で衝撃的なデビューを果たした馳星周が、背徳の世界を覗いてしまった者たちの苦悩や絶望、快楽を描いた処女中篇集「M」。「眩暈」「人形」「声」「M I」の4篇からなる本作は、今までの長篇作品の見どころのひとつであったエロスに焦点を当て、よりストーリーにリンクさせている。絶望の中の欲望をより煽情的に、欲望の中の絶望を鮮明に描いた「M」は、誰もが体験したくない、しかし、深層では求めている願望をあらわにしている。

「ヴァイブレータ」で現代女性の「性」を描き、数々の映画賞に輝いた、 日本映画界の鬼才・廣木隆一が人間の本質を深く抉る!!

今まで様々な“女の姿”をリリカルに描いてきた廣木隆一。今回、「人間が持つ本当の姿を描きたい」と熱望。時に厳しく突き放し、時に優しく包み込む廣木隆一の演出は、残酷なまでにリアルで、しかし柔らかさを待って、見ているものに手を差し伸べている。"わたしには関係ないこと"ではない。もしかしたら何かの拍子で、抜けられない闇へと堕ちていってしまうかもしれない。廣木隆一が描く『M』には、誰もが持っている、しかし直視したくない、認めたくない欲望が、シビアに、しかし優しく映し出されている。

 

モデルから転身、体当たりで演じきった美元と、若手ながらも 気鋭の監督から早くも期待されている高良健吾の熱い共演。

夫と子供と3人、幸せに暮らしているが、心には埋めることの出来ない穴がぽっかりと空いている。そんな聡子の不安定な心情を演じ切ったのは、今回が映画初出演にして主演に抜擢された美元(ミヲン)。2000年度準ミスユニバースジャパンを受賞し国内のチャリティーイベントに従事した後、世界各国でモデルとしで活躍。聡子のとまどい、不安、そして子供を守ろうとする“母”の姿を見事に体現している。聡子を救おくうとする少年・稔には高良健吾。第19回東京国際映画祭[日本映画・ある視点]部門で、本作の演技が評価され特別賞を受賞し、また青山真治監督作品『サッド ヴァケイション』に浅野忠信の弟役に抜擢されるなど、注目されている若手俳優。力強い目の奥に潜む寂しさが印象に残り、母親に捨てられたというトラウマを抱えるという難しい役所を、圧倒的な存在感とともに演じ切った。

廣木監督から厚い信頼を得ている大森南朋と田ロトモロヲが、新人2人を強カバックアップ!

聡子が日に日に変わっていく姿を見ながらも、止めることの出来ない妄想を抱く夫・秀之を大森南朋が、聡子が地獄へと堕ちていくきっかけを与えてしまったヤクザ・俵を田ロトモロヲがそれぞれ演じている。廣木監督から厚い信頼を受け、日本映画界にとって重要な存在として活躍している名優たちが、新人俳優2人を強力にバックアップしている。『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(松岡錠司/07)での名演が記憶に新しい平山広行、日本映画にはかかせない渋川清彦、戸田昌宏、奥田恵梨華、蜷川みほ、大口広司の他、最近では俳優としても活躍するなすびが、そして原作者の馳星周がカメオ出演しているなど、見どころも満載だ。

 

絶望の中にある、小さな希望。オオヤユウスケのおだやかな歌声がやさしく包み込む。

音楽、エンディングテーマぱダブポップバンドPolarisのボーカルであり、また永積タカシ(ハナレグミ)、原田郁子(クラムボン)とのユニットohanaでの活躍も目覚ましいオオヤユウスケ。『ラマン』(05)でPolarisが劇中歌を提供したのをきっかけに、ohanaのデビュー曲「予感」のPVを廣木監督が演出し、「予感」から生まれたショートムービーで主演を果たしている。今時監督からの熱いオファーを快諾し劇中音楽を書き下ろし。特にエンディングテーマである“おだやかなひかり”のオオヤの歌声は、わたしたちを殺伐とした世界から解き放ち、清らかな未来へと誘ってくれている。

本作に共鳴した荒木経惟がポスタービジュアルを撮り下ろし!

本作を観て共鳴し、ポスタービジュアルを撮り下ろしたのは、国内のみならず世界からも注目を集める日本を代表する写真家、荒木経惟。彼の視線を通して撮られた写真は、”エロス”を通じて、もうひとつの『M』を生み出した。また『M』の題字も提供。 女性のしなやかさと力強さを感じさせるロゴとなっている。

 
 

本作に描かれている聡子という女性。夫も子供もいる幸せな生活を営んでいるはずの彼女が、見えない寂しさから出会い系サイトに書き込みをしたことから、売春という関に堕ちていく。彼女が持つ寂しさの原因のひとっとして、夫から女として見られなくなっている、ということがあるだろう。もちろん本作はフィクションである。しかし「売春なんて、そんなこと私には起こり得ない」と言い切ることができるのだろうか。漠然とした不妥。それは決して結婚している女性だけの問題ではない。女性は様々な悩みと不安を持って現実を生きている。

世の中には、20代後半から30代の女性たち向けの本や漫画、雑誌、グッズなどが多く溢れている。“負け犬”(結婚してぃないキャリア女性)というフレーズは一般化され、漫画から生まれた干物女(ひものおんな)”(久しく恋愛から遠ざかっている女)、“待受女(まちうけおんな)”(行動を起こさず運命の出会いを待ち続けるだけの女子)などの女性に関する赤裸々なキーワードが世の中に氾濫している。また、20代後半から30代前半向けの雑誌が相次いで創刊され、「AERA」や「プシコ」といった雑誌が、この年代に焦点をあてた特集を組むなど、以前に比べ、彼女たちへの注目度は上がっているように感じる。

ポータルサイトlivedoorが運営しているlivedoorニュースに“独女通信(どくじょつうしん)”というコンテンツがある。独女とは独身女性という意味で、いわゆる“負け犬”と呼ばれる30代の独身女性をターゲットにした記事を、ほぼ毎日配信している。平均5万アクセス/1日、多い時には25万アクセス/1日を記録することもあるこのコンテンツは、主に独身女性の結婚観、恋愛観や、転職、収入などの仕事関係の記事や、女性の身体に関することまでを本音で記されている。

基本独身女性をターゲットにしているが、既婚者が語る結婚生活や、女性全員に通じる記事も多く見受けられる。例えばこんな記事。『独女がはまるパワーストーン』(2007/ 2/16付)。そのなかで、一通りパワーストーンの魅力を語った後、「やっぱりみんな病んでぃるのね……と自虐的になった」とあり、これは独身女性だから病んでいる、と言うわけではなく、パワーストーンを持てば何かいいことがあるかもしれない、現状から何かに救ってもらいたい(この場合はパワーストーン)、依存したいという気持ちの表れではないのだろうか。

また、『リサイクルセックスにご用心』(2007/5/18付)という記事中ではこんなコメントがあった。リサイクルセックスとは、男友だちや元彼とセックスしてしまうことである。「何年か友人として付き合ってきて、相手の性格・人柄などもまあまあ分かって来ていた頃に、恐らく安心感から何度かセックスしてしまいました。寂しさや孤独があって、それを埋めたいという気持ちが大きかったですね」。

この記事の中に出てくる女性はみんな何かが満たされないと感じ、癒しを求めている”らしい。皆、寂しさや孤独を抱え生きている。つきあっている、結婚している人以外とセックスを行うことは良くないこと、という倫理的感覚が希薄になってきていることもひとつの要因としてあげられるが、それ以上に「誰かに“癒し”を求めている女性が多いのでは」というのが、『リサイクル・セックス〜元彼や男友だちと気軽にセックスする女たち〜』の著者、安藤房子さんの考えだ。劇中の聡子は、その際たる姿に見える。自発的に行動しない、流されることが楽だと自分では気付いていないが、自分の置かれた状況に恐怖を抱きつつも、一方で心地良さを感じている。しかし今、この状況に共感する女性が多く存在するのではないか? 誰も通っていない山道を自分で切り開くより、誰かが踏み倒してくれた草の上を歩く方が遥かに楽なように、現代の女性たちは様々な要因によって疲れ果て、その結果、誰かに依存したい、という深層心理が露になってきているように感じる。あなたは『M』という映画を、本当に無関係だと言い切ることができるのだろうか?

『独女通信』:http://news.livedoor.com/category/vender/90/
『リサイクル・セックス〜元彼や男友だちと気軽にタックスする女たち〜』安藤房子(WAVE出版)

 
 

1979年、東京都出身。日本人の父と韓国人の母を持つ。2000年度準ミスユニバースジャパンを受賞。 ミスユニバースジャパンとして国内のチャリティー活動などに従事。その後アジアを中心に、パリやL.A.など10カ国以上で、シャネルやマークジェイコブス、エンポリオ・アルマーニ、イブ・サンローランなどのショーでモデルとして活躍。2005年に、中国で開催された、MODEL LOOK世界大会で特別賞受賞。
香港アクションスターのサモ・ハン・キンポー師の招待により、L.A.でレッスンを受ける。 今回初めて演技に挑戦し、不安定な聡子の心情を体当たりで演じきった。また、マリ・クレール香港版などでのライターとしての執筆活動や、ミスユニバースジャパン選考でのウォーキング講師などを勤めているなど、女優、モデルをはじめとした幅広い活躍が期待される。
主な出演作に「大韓航空機爆破事件から20年 金賢姫を捕らえた男たち〜封印された三日間〜」(07/CX)、『東京ソーダ水』(08/飯塚敏明総監督)がある。

 

1987年、熊本県出身。05年1月から放映されたテレビドラマ「ごくせん」(NTV)でデビューし、続いて「ウォーターボーイズ 2005 夏」(CX)にも出演。
映画デビューは、『ハリヨの夏』(06/中村真夕監督)。映画初出演、主演ながら、思春期の戸惑いを見事に表現。 本作では幼少時に負ったトラウマを引きずっている稔役を好演。力強い瞳の奥にある寂しさが印象に残る。 その他、『地下鉄に乗って』(06/篠原哲雄監督)、『逃亡くそたわけー21才の夏』(07/本橋圭太監督)などがある。 また『サッド ヴァケイション』(07/青山真治監督)では、主人公の弟を演じ、その確かな演技力は話題となっているなど、現在もっとも注目されている若手俳優である。

 

1972年、東京都出身。96年、市川準監督演出のCMで一躍注目を集めたのをきっかけに、映画を中心に役者活動を開始し、現在は日本映画を代表する俳優として数多くの作品に出演。廣木作品では『ヴァイブレータ』(03)で主演している。主な出演作として『ビッグ・ショー〜ハワイに唄えば〜』(99/井筒和幸監督)、『殺し屋1』(01/三池崇史監督)、『忘れられぬ人々』(01/篠崎誠監督)、『Dolls(ドールズ)』(02/北野武監督)、『OUT』(02/平山秀幸監督)、『赤目四十八瀧心中未遂』(03/荒戸源次郎監督)、『デーモンラヴァー』(05/オリヴィエ・アサイヤス監督)、『ゲルマニウムの夜』(05/大森立嗣監督)、『乱歩地獄<芋虫>』(05/佐藤寿保監督)、『キャッチボール屋』(06/大崎章監督)、『チルドレン』(06/源孝志監督)、『それでもボクはやってない』(07/周防正行監督)、『蟲師』(07/大友克洋監督)、『ミッドナイトイーグル』(07/成島出監督)など多くの監督から絶大な信頼を得ている。また最近は「ハゲタカ」(07/NHK)で主演を演じ、放送文化基金賞「出演者賞」や作品がギャラクシー賞「優秀賞」など数々の賞を受賞するなど、映画のみならずテレビ、CMなど幅広く活躍している。

 

1957年、東京都出身。大学中退後、漫画家、ライター、イラストレーターなどの仕事をしながら、78年、劇団「発見の会」で舞台デビュー。84年パンクバンド「ばちかぶり」を結成し、音楽活動も開始。インディーズレーベルでレコードを出し、ライブ活動も行う。89年、塚本晋也監督の映画『鉄男』主演をきっかけに、主な活動をスクリーンへと移行させていく。以後、多数の映画に出演。廣木作品には、90年『さわこの恋』をきっかけに『魔王街』(93)、『夢魔』(94)、『君といつまでも』(95),の三部作で主演を、また『800〜TWO RAP RUNNERS』(94)、『MIDORI』(96)『東京ゴミ女』(00)『理髪店主のかなしみ』(02・主演)、『ラマン』(04)、『やわらかい生活』(06)などほとんどの作品に参加しており、廣木作品にはかかせない存在である。96年度日本映画プロフェッショナル大賞功労賞、97年度 毎日映画コンクール男優助演賞受賞。役者以外の活動では、05年12月に終了したドキュメンタリー番組「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」(NHK)のナレーションを担当。また03年には映画『アイデン&ティティ』で初監督に挑戦、大ヒットをおさめた。その他近年の主な映画出演作に、『刑務所の中』(02/崔洋一監督)、『MASK DE 41』(04/村本天志監督)、 『青い車』(04/奥原浩志監督)、『大停電の夜に』(05/源孝志監督)、『小さき勇者たち〜GAMERA〜』(06/田崎竜太監督)、『幽閉者(テロリスト)』(07/足立正生監督)、『プルコギ』(07/グ・スーヨン監督)、『オリヲン座からの招待状』(07/三枝健起監督)などがある。

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──撮影は短期間に集中して行われたそうですね。

高良健吾(以下、高良) 撮影期間は3週間半くらい。当時、僕は高校3年生だったので、熊本から上京してホテル住まいをしながら現場へ通いました。初めて主演クラスの作品だったので毎日が緊張の連続。役づくりもわからないまま、無我夢中で作品の中に飛び込んでしまった感じでした。

──撮影中に廣木監督からかなり鍛えられたと聞きましたが。

高良 廣木監督からは「芝居をするな」と何度も怒鳴られました。わざとらしい、ありきたりの芝居だ、もっと考えろと。僕が演じる時に余計なことを考えていると、それを見透かしたように「健吾、何も考えるな」と毎日のように追い詰められて。うまくできないもどかしさがあったけど、自分のつらさや戸惑いが稔の心情とオーバーラップして、少しは役作りに生かせたような気もしています。

──本番中も廣木監督はカメラの横から役者の動きをチェックされていたそうですね。

高良 カメラの横から監督が見ているのは、ものすごいプレッシャーになります。生身の役者をダイレクトに見ているから、ウソっぽい演技はすぐ見破られる。その反面、いつも自分が見守られている安心感がありました。僕は廣木監督に育てて頂いたと思っていますし、今思うとすごく幸せな時間でした。

 

──苦労したシーンはどのあたりですか。

高良 人を殺す場面とか、実の母親をレイプする場面などは精神的につらい面があって大変ですけど、自分の身近にない出来事だからふりきってやってしまえばいい。ところが、日常的な稔の会話や動作が難しく感じます。ごはんを食べるシーンとか風呂に入るシーンとかは自分が演じていてどうしてもウソっぽく感じてしまうから。
それから稔が聡子の家に乗り込み、説得しているうちに怪しい雰囲気になって最後に聡子に蹴りを入れる場面も苦労しました。自分の中で想像もつかない行動ですから。

──相当苦労した作品のようですが、見事に第19回東京国際映画祭の日本映画・ある視点部門・特別賞を受賞されました。

高良 作品が評価されたことはうれしいんですが、僕が賞をいただくなんて驚きです。僕自身はまだまだ賞をもらえる役者ではありません。今でも自分の芝居を見るのがつらいし、芝居をすることが怖いんですよ。賞をもらう役者の方はみなさん演技が上手ですから、高良も演技がうまいと思われたら困る(笑)。
監督さんが僕の手柄にしてくれたんです。

──この作品の魅力はどこにあると思いますか。

高良 「本当に救いがない物語だね」と廣木監督と話したりもしたんですけど、僕はこの作品が大好きです。救いようがない中にも、少しの希望があるように思える。その希望が何かは観た人によってさまざまでしょうけど、作品の中にある希望の光を少しでも感じ取ってもらえたらうれしいですね。

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