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特集
スルース

 

監視カメラが作動し、正面ゲートを抜け、長いドアウェイを走る中古のシトロエンを捉える。
ここは、ベストセラー推理小説家アンドリュー・ワイクのロンドン郊外の邸宅だ。
エントランス前に横付けされたワイクの新車のベンツの隣に、シトロエンを止めた若い男は、ベルを鴫らした。
「マイク・ティンドルです」「会えて嬉しいよ」若い男は邸内に招き入れられた。
ジョージア王朝風の外観とは全く異なり、中はモダンなデザインの粋を集めた、現代アート・ギャラリーのような趣だ。
「誰がインテIリアをデザインしたか知ってるかね?」「あなたの奥さんですよね」
「マイロ・ティンドル・・・。珍しい名前だな」「父がイタリア人なので」
ウォッカとスコッチで乾杯し、館内を得意顔で案内するワイク。
ドア、ライティング、警備システム。
館内のほとんどが、ワイクの手の中の小さなリモコンひとつで、管理されているのだった。
「本題に入りましょう。なぜ奥さんと離婚しないのですか?」
ワイクの妻マギーは、 若いティンドルと浮気をしており、
ティンドルは、ワイクにマギーとの離婚を合意してもらうため、屋敷を訪れたのだ。
「ところで君の仕事は?」「俳優です」「どんな役を?」「今は失業中です」
「そんな君に、贅沢な妻を満足させてあげられるのかな?」
ハンサムなこの若い男の要求を、すんなり満たしてやる義理はない。
「君に提案がある」
ワイクは用意していたアイデアを切り出した一一。

 

ジュード・ロウと、長年の友人のサイモン・ハルフォンは、共同制作の映画のアイディアについて定期的に会って話し合っていた。ある会話の中でハルフォンが、アンソニー・シェーファーによる戯曲、後にジョゼフ・L・マンキウィッツ監督、ローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケイン主演で映画化された作品のタイトルを口にした。「スルース」。

「オリジナル作品の完成度は高いけど、ストーリーの中核にはまだ未開拓な分野がある。これを現代に置き換えることによって、話を進化させられるのではないか」と。話し合ううちに、脚本をハロルド・ピンターに頼んだらどうだろう、という話が出て、プロジェクトは一気に具体化した。ロウは言う、「僕は無謀にもピンターに手紙を書いた。最悪の場合、¨ハロルドをランチに誘ってオファーしたけど断られてしまってね”って話のネタになると思ったからね。幸い、会ってくれた彼に、ストーリーの本質を語った。男性二人が部屋にいる。年寄りと若者。二人は、場面に登場しない一人の女性を巡って、肉体的にも精神的にも喧嘩を繰り返す。ハロルドは『それは私が40年間に渡って描いてきたことだ』と言い、その場で作品への参加を快諾してくれたよ。」

ロウは、実は数年前にマイケル・ケインに「探偵〈スルース〉」のリメイクのアイディアを提案したことがあった。ピンター の脚本が完成し、改めてケインにオファーしたところ、1972年の映画版でローレンス・オリヴィエが演じた役を演じることを受け入れてくれた。監督に抜擢されたケネス・プラナーは、「プロデューサーにジュード・ロウ、そしてマイケル・ケインが出演して、脚本はハロルド・ピンター。この面子を聞いて興奮しない奴はいない。シェーファーの「スルース」は舞台としても、映画としても既に素晴らしい作品として存在しているが、ピンターの脚本は、物語の中核と登場人物は同じだが、雰囲気、キャラクター、あらすじまでも全く違うものになっていた。凄い作品になる、と確信したよ」

アンドリュー・ワイク役のマイケル・ケインについて、ピンターは正に適役、と表現した。ジュード・ロウもプロデューサーの立場から、ケインがこのプロジェクトに参加することは、ケインの演技がピンター脚本の魅力を存分に引き出す能力を持つばかりでなく、色々な意味で不可欠だ、と感じていた。

「マイケル・ケインとハロルド・ピンターは、正に夢の顔合わせなんだ」

ロウは言う。「二人はどちらも、信じられないくらいパワフルだ。ユーモアがあるし、切れ者だけど、危うさもある。色んな面で、本当に相性ピッタリなんだ」

ブラナーは言う。「マイケルの演じるキャラクターについては『病的な嫉妬』について書かれている記事を見つけたので、それを読んでもらいました。それは誇張され、グロテスクで、かなり強烈な経験をつづったものでした。その人物は、不合理で精神病に近い嫉妬に取り憑かれ、悩まされ、挙句の果て、嫉妬した方も、された方も、かなりの被害を被ったのです。この記事を読んだマイケルは、これこそがアンドリューのしたこと全ての根底にあるものだ、とすぐに同意してくれました」

ケインは語る。「72年版「スルース」は、完成してから見直していませんが、オリヴィエの演技が素晴らしかったのは、もちろん覚えています。とても危険で、エキセントリックでした。オリヴィエのワイクは面白い役柄でしたが、わたしの演じるワイクはもっと怖いかもしれません。精神異常者、を演じているという訳です」

ロウはプロデューサーとして忙しかったため、マイロの役について考え始めたのは、プロジェクト開始後、かなりの時間が経ってからだった。「映画化のことで頭が一杯で、大変な状態だったんだ」ロウは言う。「最初は不安になった。マイ口には色々な面があって、演じるのは簡単じゃない、って知っていたからね」

しかし、マイケル・ケインは、「ジュードが今までに演じた役の中で、今回の演技が一番素晴らしかった」と絶賛している。

 

 

マイケル・ケイン(アンドリュー・ワイク)
本名モーリス・ジョゼフーミクルホワイト(Maurice Joseph Micklewhite)。1933年3月14日ロンドンの南部に生まれる。16歳でガッッ港を中退した後、兵役を挟み様々な仕事に就き、除隊してから、昼働きながら、夜は演技の勉強をするようになる。演劇関係での最初の仕事は、サセックス州ホーシャム市での舞台監督助手。その後サフォークに移り、ロ一エストフト・レパートリー劇場で俳優として舞台に立つ。ロンドンでウエスト・エンドの芝居や映画に端役で出演しつつチャンスを待ち、やがてテレビドラマに出演する機会を得て、5年間で100本ものドラマに出演、徐々に顔が知られるようになる。舞台で最初に主役の座をつかんだのは。ロンドンのプライベート・バンフォースでのビーター・オトリールの代役だった。映画では1963年に「ズール戦争」に出演。その演技力で批評家に注目されるようになり、その後「国際諜報局」に主演。作品もヒットし、自身も人気を得るようになり、続く主演作「アルフィー」「66」(後にジュード・ロウ主演でリメイク)の成功により、無名時代へ完全に別れを告げた。1956年から今日まで出演した映画は90本以上にもなり、受賞した賞も数え切れない。

 

ジュード・ロウ(マイロ・ティンドル)
1972年12月29日ロンドン生まれ。12歳の頃からナショナル・ユース・シアターの舞台に立ち、1994年にはジャン・コクトーの戯曲「恐るべき親たち」でマイケル役を演じ。イアン・チャールソン賞に最優秀新人としてノミネートされた。この演目はブロードウェイで「Indiscretions」と改題され再演、トニー賞の最優秀助演男優賞にノミネートされ。アメリカの演劇界でも注目を集める。映画デビューは「ショッピング」(93)。映画俳優として頭角を現したのは、妖艶な魅力を放つアルフレッド・ダグラス役を演じた「オスカー・ワイルド」(97)。同年、クリントーイーストウッド監督作「真夜中のサバナ」で男娼役、アンドリュー・ニコル監督の近未来SF「ガタカ」で元エリート青年役を演じ、世界中の女性の注目の的となった。その後、「リプリー」(99)で主人公を翻弄する御曹司役に扮し、その確かな演技力を認められ、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞の助演男優賞にノミネート、英国アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。同年「チューブ・デイルズ」の中のワンエピソードで監督業にも進出。

 

 

Q. プロデューサーとキャストを兼務した感想は?

A. 貴重な経験だった。誇らしく、責任も感じたよ。俳優が役を研究するなら、プロデュースをするのが一番だ。でも。リハーサルの前まで、プロデュースに専念するあまり、自分が演じなければいけない役の難しさをすっかり忘れていたんだ。とても恐かったけど、その分やりがいがあった。

Q. 憧れのハロルド・ピンター と仕事をしてみて、何か得たものはありましたか?

A. ピンターは当然ながら自分が書いた脚本に絶対の自信を持っている。"ああ"というセリフを省いてしまっただけでもダメ。そこに"ああ"が必要なんだ。彼の言うことを忠実に良く聞き、その瞬間に。そこにふさわしい反応を返すことに集中した。今回僕は重要なことを学んだ。観客に笑いや緊張を伝えるためには、自由にセリフを楽しみながら、セリフに従うことなんだってね。

Q. 舞台に戻りたいと思うことはありますか?

A. 詳しいことはまだ言えないけど、近いうちにやる予定なんだ。舞台に戻りたいと何年も考えていたんだけど、ようやく準備か整ってきた。舞台は、リハーサルを繰り返して、模索しなから作り上げていくわけだけど、色々な挑戦ができて楽しいよ。

Q. 「スルース」の見所を教えてください。

A. 老若の男2人が、ひとりの女性をめぐって争う。このシンプルなセッティングを、ピンター が、辛らつに描いている。この映画には、あらゆる要素がある。英国風ユーモアのセンスと倫理観を持ち、さらに累迫感のあるセスペンスも盛り込まれた娯楽作品だ。すべてを把握しようとすると難解でもある。誰がいつどうやって優勢になるか先が読めないからね。多くの疑問を生みながら、想像力を膨らまして楽しんでほしい。

 

品番 BIBF-7639
発売日 2008.9.26
スペック カラー / 89分 / 片面2層 / 1枚組
価格 3,990 円(税込) / 3,800 円(税抜)
画面 16:9LBシネスコ
字幕 1.日本語字幕
   2.日本語吹替用字幕
音声 1.英語ドルビーデジタル5.1chサラウンド
   2.日本語ドルビーデジタル2.0chステレオ
公開日 2008年3月 公開 (一般)
製作国 アメリカ
製作年 2007 年
© MRC II Distribution Company LP

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