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リトルランナー
世界を
1953年

 本作は、昏睡状態に陥った病気の母が目覚めることを願い、マラソンを走ることを選んだ少年の成長物語である。しかし品行方正な主人公による、感動おしつけの物語などではない。舞台となるのは1950年代のカトリック系学校。父が戦死し、病気の母と二人暮らしの主人公ラルフは思春期真っ只中の14歳だ。これがなかなかの問題児で、タバコを吸ってみたり、プールの女子更衣室を覗いたりして、校長先生に呼び出されることもしばしば。そんな彼がマラソンを志すのは、看護婦が母の病状について「奇跡でも起こらなければ目覚めない」と言ったからだ。同じ頃、クロスカントリー部のコーチに「君がボストンマラソンで優勝するのは奇跡だ」と言われ、ラルフの中で「奇跡」がつながる。僕がボストンで優勝すれば母にも奇跡が起きる--この微笑ましい短絡がトラブルを巻き起こすこととなる。幸せとは身のほどを知ることだと主張する校長にすれば、問題児ラルフが神の行為であるはずの「奇跡」を口にすることなど許せない。出場したら退学だと宣告する。

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トロント映画祭では

それでも雨の日も風の日もひたむきに練習するラルフ。彼の心の奥には母を失う恐怖や孤独もあるのだが、映画はそこをあえて強調しない。むしろ彼を取り巻く人々とのエピソードを通してユーモアをふりかける。さらに宙を舞うように走る場面や、サンタクロース姿の神様と会話するラルフの奇妙な個性がファンタジーの色を添えている。元五輪代表のマラソン選手だった神父や親友、ガールフレンド、堅物の校長。そんな人間模様が折り重なり、やがて地下水がにじみ出るように観る者の心を爽やかな感動で包みこんでいく。描かれる「奇跡」のかたちも清々しい。監督・脚本は自身、1985年のデトロイトマラソン優勝の経験をもつ新鋭マイケル・マッゴーワン。ベテラン俳優を向こうに回し主人公ラルフをのびのび演じたアダム・ブッチャーの名演も印象深い。トロント映画祭でのプレミア上映時には幕が下りた後も拍手が鳴り止まず、パリ映画祭では見事グランプリを獲得した。この心温まる奇跡の物語がいよいよDVDに!

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