── 最初に脚本を読んだときの感想を聞かせてください。
石田 まだ原作となった小説が本屋大賞を取る前で、僕も小説は読んでいませんでした。そんなこともあって、最初に脚本を読んだときは、ただ歩くだけの話が映画になるのかなあと思いましたね。でも、脚本を読み込み、リハーサルを重ねるうちに、静かで淡々とした物語であることがこの映画の持ち味なんだということがわかってきました。
── 石田さんが演じた西脇融という役をどう感じましたか。
石田 理解できる部分もあるし、理解できない部分もありました。たとえば、貴子(多部未華子)とはある特別な関係にあるわけですが、あそこまでそれを意識して、かたくなになる必要があるのだろうかと…。そんな彼の気持ちを表情で表現しなくてはいけない。脚本に「……」と書かれている部分をどう演じるかが難しかったですね。
── 目の演技が印象的です。
石田 僕としては多部ちゃんの芝居を受け、それに応えるかたちで演じたつもりです。セリフが少ない分、表情の演技で悩みました。でも、出来上がった作品を見た人に「セリフは少ないけど、顔で気持ちが伝わってきた」と言っていただいたときは嬉しかったですね。西脇融というのはシャイで不器用な人間です。不器用なところは僕に似ていると思いますね(笑)。
── 撮影前に、主要キャストと監督、スタッフで24時間かけて60キロを歩く「歩行祭リハーサル」を実施されたそうですが。
石田 やるだろうなとは予想していたんですけどね。でも、実際に歩くのは、やっぱり嫌でした(笑)。とくに、僕はその前日が別な作品の撮影で徹夜でしたから。けっこう疲れていたんで、きつかったです。しかも、僕は翌日も別な撮影が入っていて、途中、深夜3時くらいにバスで帰ったんですよ。そんな事情も知らないで、他のみんなから「あいつ、バスで帰っちゃうよ」みたいに思われたのは辛かったですけど(笑)。
── 「歩行祭リハーサル」の経験は演技の上で役立ちましたか。
石田 たいへんそうなことって、やる前は嫌でも、いざやってしまうと満足感や達成感があるし、撮影に入る前に出演者やスタッフの間でそういう共通の空気を持てたのはすごく良かったですね。僕は、戸田忍を演じた郭(智博)クンといっしょに歩く時間が長かったんですが、かなりいろんな話ができました。親友どうしの役ですから、いい機会を持てたと思います。彼も僕と同じで人見知りなんですけど、撮影中は映画の中の関係以上に、二人でよくしゃべっていました。
── 長澤監督の印象は?
石田 とても優しい方だし、本番では演技について何も言われませんでした。けっこういろいろ言われる監督との仕事が多かったんで、新鮮な体験でした。
── ラスト近く、校門前の坂道で貴子に笑いかけるシーンがいいですね。
石田 お互い、初めて気持ちが通じ合えたシーンですよね。それまでは話もしないし、僕が“近寄れないオーラ”をビンビンに出している。それを、友達が二人だけになる場をつくってくれたわけで、そこで僕はどんな表情で演技したらいいのか、すごく悩みました。あのシーンまで僕が笑っているシーンはないはずです。それくらい表情については意識しましたね。その前に話をするところも、開き直って話すのか、迷いに迷って何か言うのか……いろいろ考えました。
── 出来上がった作品を見て、どう思いましたか。
石田 自分の出た映画って、なかなか客観的に見られないですね。どうしても仕事として見てしまいます。今は他の邦画も同世代の人が出ていると「どんな演技をしているんだろう」という目で見てしまって、純粋に楽しめない。それが困ります(笑)。だから、洋画のほうが見るだけなら楽しいですね。
── 好きな役者、好きな映画は?
石田 邦画だと『パッチギ!』なんていいですね。役者ならエドワード・ノートン。『真実の行方』や『25時』で見せる、彼の目の演技が好きです。ほかには『セブン』や『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』のケヴィン・スペーシー。独特な存在感があって、しかも役を楽しんで演じているところが素晴らしいですね。
── 最後に『夜のピクニック』のDVDを見る人へのメッセージを。
石田 素晴らしい青春映画ですから、とにかくここに描かれている青春を感じてください。青春っていいよな、自分にもこんな時代があったよな……見た人、一人ひとりにそんな何かを思い、何かを感じてほしいですね。
profile 石田卓也(いしだ たくや) 2005年、TBS開局50周年スペシャルドラマ『青春の門−筑豊篇−』などで印象深い役柄をこなし、映画『蝉しぐれ』でキネマ旬報ベストテン・日本映画新人男優賞を受賞。07年は『キトキト!』『リアル鬼ごっこ』の公開が控える。1987年生まれ。

