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過去多くの悲恋映画が公開されてきたが、本作ほど見るものの心を掴む作品はないだろう。制作当時の政治的状況や市民の生活などを現実的に描きながらも、全ての台詞を歌に載せると言う大胆な作品。映画出資者を募るも、奇抜なスタイルに断られ続け、マグ・ボダールがオファーを受け入れるまで一年が経過していた。

主役であるドヌーヴは、ドゥミが「L'Homme a Femmes」(60)でその才能を見いだし、直接本人へオファーを送った。撮影期間中、映画監督R・ヴァンディムとの間に子どもをもうけながらも破局。しかし、皮肉にも身の上が役柄と重った彼女は、この作品への出演で女優としての志が高まったことを自身で公言している。

悲哀なストーリーにも関わらず、衣装やセットの演出には原色を多く使い大胆なイメージを打ち出した。監督が美大学生からの友人である、J・モローとB・エヴァンのセンスが数多くちりばめられている。同時に、ルグランの天才的音楽センスは、要所で彩りを加え、“I will wait for you”や、“Watch what happens”など、以降のアーティストにも影響を与える名曲を生み出している。

フランス北西部にある港町、シェルブールで、自動車修理工のギイと傘屋のジュヌヴィエーヴは美しい恋を育んでいた。未亡人の母エムリーは、恋に盲目になる彼女を気遣い小言をいうが、ジェヌヴィエーヴはギイとの幸せな時間にふける毎日であった。しかし、アルジェリア戦争が二人に暗い影を落とす。徴集令状が届き、出兵前夜に結ばれたふたりであったが、ジュヌヴィエーヴは、ギイがいなくなることへの不安でいっぱいだった。そして、彼女はギイとの愛の結晶を宿す。哀しみに暮れる中、ギイの徴兵以前より傘屋の窮地を助けてきたカサールが結婚を迫る。遠くなるギイの存在に戸惑いながら、カサールの誠意に心をうたれた彼女は結婚を受け入れてしまう。２年の月日が過ぎ、戦争で負傷しシェルブールに戻ってきたギイが知ったのは、愛するジュヌヴィエーヴの結婚であった…。

「シェルブール」でジュヌヴィエーヴと結婚することになるキャラクター“ロラン・カサール”は、ドゥミとルグランの１作目「ローラ」で既に登場している。カサールは、ドゥミの故郷“ナント”を舞台とし、ローラに恋を寄せる青年としてこの作品中で描かれているのである。又、「ローラ」の重要なシーンであるナントの大通り“ポンメライエ”は、「シェルブール」においてロラン・カサールが、ローラとの想い出を歌うシーンとして、この場所が使われている。その歌のメロディはなんと「ローラ」のテーマ曲である。
ドゥミは、このように自作のキャラクター・場面をカメオ出演的に登場させたり、関連づけることがしばしば好む。

「ロシュフォール」では、旅芸人エチエンヌとビルが、“シェルブール”で出会った設定になっていたり、「ローラ」のデノワイエ夫人が、劇中の台詞の中に登場する。又、「ロシュフォール」で、ドヌーヴとジャック・ペランの二人が出会うことを暗示されていたが、その後の作品「ロバと王女」で顔を合わせることになる。そして、ローラのその後の姿は、「モデル・ショップ」で描かれている。

品番：BIBF-7801
発売日：2009.7.17 発売予定
スペック：カラー / 92分 / 片面1層 / 2枚組
価格：4,700 円(税抜)
画面：16:9LBアメリカンビスタ
字幕：日本語字幕
音声：フランス語リニアPCM2.0chステレオ
公開日：2009年1月 公開　(一般)
製作国：フランス/ドイツ
製作年：1963 年
『シェルブールの雨傘』字幕:清水 馨
『ジャック・ドゥミの世界』字幕:加藤リツ子

特典
<特典映像>
■本編ディスク
日本版劇場予告編
STAFF&CASTプロフィール(静止画)
■特典ディスク
映画「ジャック・ドゥミの世界」(約87分)
ミュージックチャプター(約19分)
片面1層/フランス語ドルビーデジタル2.0ch/日本語字幕/16:9ビスタサイズ
<封入特典>
ポストカードブックレット
豪華外箱仕様

© Ciné-Tamaris

「シェルブールの雨傘」より３年、オールスターの本格的ミュージカルを目指して製作された本映画は、前作の成功を受け、莫大な予算を投じて撮影が行われた。クレーンを駆使した立体撮影、ダイナミックな画を撮ることができる撮影地ロシュフォールと、全ての条件が揃った中、ドゥミの思い描いていた映画がこの作品で実現されている。

豪華なキャスト陣には、２年越しのオファーで出演となったジーン・ケリー、「ウエスト・サイド物語」で絶大な支持を得ていたジョージ・チャキリスを起用。又、現在は映画製作者であり、当時はイケメン俳優として名を馳せたジャック・ペラン、戦前から活躍する大女優ダニエル・ダリュー、名脇役ミシェル・ピコリと、ゴージャスなメンバーが脇を固める。

「シェルブール」に引き続き、J・モロー、B・エヴァンの二人がつくり出す美しい衣装やセットは、見るものの目を楽しませてくれる。そして、天才コンポーザー、ルグランは、映画のコンセプトでもある、幸福な人間を表現する陽気な曲調、を得意としていなかったが、結果生み出された曲たちは、その後の名曲として現在でも取り上げられることが多い。

軍港のある町、ロシュフォールにやってきた祭りのシーズン、旅芸人エチエンヌとビルはショーの準備をはじめた。双子の美人姉妹、ソランジュとデルフィーヌも、新しい出会いを感じながら歌い出す。作曲家を目指す姉、そして、ダンサー志望の妹は、パリで自分たちの実力を試したいと思っている。
ロシュフォールに駐屯する水兵マクサンスは、理想の女性の出会いを夢見て、得意な絵で理想のイメージをキャンバスに描く。描かれた絵は、実にデルフィーヌにそっくりであった。コルベール広場でカフェを営む姉妹の母イヴォンヌは密かな恋をしていた。お相手のシモン・ダムは、別れた彼女との想い出を求めてロシュフォールに戻り、楽譜店を営む男性である。アメリカから、シモン・ダムを訪ねてきた有名作曲家アンディは、町でソランジュと出会う。惹かれ合いながら離れる二人。町中が沸き立つ三日の間に、新たな出会いと恋が交錯する。そして、かつての恋は再び燃え上がってゆく。

主演となる双子の姉妹役には、当初、オードリー・ヘプバーンとブリジット・バルドーが想定されていたが、オードリーはオファーを断る。ジャンヌ・モローやジェラルディン・チャップリンの名が候補にあがるも、その間にバルドーが降板。そして、ドヌーヴとフランソワーズ・ドルレアックという実の姉妹が抜擢。1964年のカンヌの受賞によって、明暗をわけた二人であるが、本作で多くの時間を共有し、楽しい時間を過ごしたと、ドヌーブが著書「Elle s'appelait Francoise…」で回想している。ジョージ・チャキリス曰く、撮影期間中、ジーン・ケリーとチャキリス、そして二人の姉妹で、旅行に出かけたこともあったとか。しかし、幸せも束の間、ドルレアックは、1967年6月に、ニースでの自動車事故で逝去。

本作では、進駐軍の姿や、連続殺人犯など、当時としてはミュージカル的でない暗い要素が用いられているが、登場人物の幸せを追い求める姿がより際立たせられる結果となった。出演者自身の幸せな時間、そして、ドルレアックの不幸など、その背景を思い描きながら本作を鑑賞すれば、幸せにつつまれた歌と踊りで描かれる人生賛歌により胸を打たれることだろう。

品番：BIBF-7802
発売日：2009.7.17 発売予定
スペック：カラー / 127分 / 片面2層 / 2枚組
価格：4,700 円(税抜)
画面：16:9LBシネスコ
字幕：日本語字幕
音声：フランス語リニアPCM2.0chステレオ
公開日：2009年1月 公開　(一般)
製作国：フランス/アメリカ
製作年：1966 年

特典
<特典映像>
■本編ディスク
日本版劇場予告編
STAFF&CASTプロフィール(静止画)
■特典ディスク
映画「25年目のロシュフォールの恋人たち」(約63分)
ミュージックチャプター(約23分)
片面1層/フランス語ドルビーデジタル2.0ch/日本語字幕/4:3スタンダード

ポストカードブックレット
豪華外箱仕様

© Ciné-Tamaris