2007年、ロブ・ゾンビが徹底的かつ現代風に描いた新生版『ハロウィン』は、ホラーファンに受け入れられ、大ヒットを記録した。しかしながら、第1作を完成させた当の本人は、すっかり燃え尽きて疲れていた。「もう二度と"マイケル・マイヤーズ"という名前を耳にしたくない気持ちだった。でも、大変な仕事を終わらせた後は、いつもそう思う」
彼は『ハロウィン』の責任を一旦放棄したが、その後登場人物に対する愛着から考え直した。「独占欲が強くなってしまったんだ。自分が描いたマイケル・マイヤーズやローリー・ストロード、『ハロウィン』の世界を他の誰かに支配されたくなかった」犯罪シーンを再び描く心構えとやる気を取り戻した彼は、第1作直後からのストーリーを描くことにした。
「本作は前作の『ハロウィン』とあわせて4時間で1本の大作になり得るよ。ストーリー展開を考えていたら、ローリーの壊れた精神状態を分析していた事に気付いたんだ。前作のラストシーンで、彼女の頭が混乱し、血まみれの姿で銃を握りしめていてる時こそ、彼女が最も魅力的で複雑な内面を表現していた。そのイメージが私にとっては『ハロウィンII』につながるインスピレーションとなったんだ」
彼はローリーをただの『追いかけられる女」ではなく、活発で複雑な主人公として描くことにした。彼女がだんだん正気を保てなくなっていく様子を描き、作品の緊張感を徐々に上げていったのだ。続編をローリー・ストロードの目線で描く為、前作でのマイケル・マイヤーズの残像を追うのをやめ、トレードマークとも言うべきマスクを捨て去った。そして代わりに、隠されていたタイラー・メインの表現豊かで静かにゾッとさせるような演技を生かしたいと考えた。
「タイラーはとても緊張感のある顔つきをしているのに、マスクをしてしまうと、『ただマスクをした男が動いている』ようにしか見えないと思った。今回は、彼の表情が前作に比べてよりいっそう張り詰めていたから、ほとんどマスクをつけなくても良かったんだ」登場人物同士に共通する特徴は、彼ら全員が逃れられない悪夢を経験したということだ。
「恐ろしい惨劇を生き延びた彼らが、過去の悪夢にどのように向き合うかを現実的に描きたかった。誰もがそれぞれ違った対応をするはずだからね」
オリジナル版の『ハロウィン6/最後の戦い<未>』でアソシエイト・プロデューサーとして携わって以来、同シリーズとの関わりが長い彼は、ロブ・ゾンビが再びメガホンを取ることを喜んだ。
「彼はとても情熱的な監督だ。手がけるものに独特のビジョンを持っている。音楽、脚本、監督、すべてに対してオリジナリティがあるんだ」前作よりも更なる恐怖、緊迫感、ショックを味わえる『ハロウィンII』にも「ロブ・ゾンビらしさ」がうかがえる。
「彼が造り出したのは、非常にザラザラとした現実的な映像だ。他のどんな作品とも異なる。感触が分かる映画なんだ」
『ハロウィンII』に新たな方向性を見いだすため、ロブ・ゾンビはかつての『ハロウィン』シリーズを忘れた。彼は前作で登場人物達が直面した悲劇を細かく分析し、どんなガイドラインも制約も受けることなく、自らの物語を作り上げた。
「この作品でロブ・ゾンビは、登場人物を更に自分なりに探求して、役柄を完成させている。それはもうワクワクしたよ」
「"II"は、前作より、更にキャラクター寄りになっている。私は、若いマイケルと彼の母が再び登場するというアイディアが好きだ。彼が精神病でおかしくなっている感じもね。毎回切りつけてばかりいるような内容を描いても仕方ないし、これは素晴らしい改善点だと僕は思う」悲惨なストーリー展開だが、マイケル・マイヤーズの凶行が全てなわけではない。ルーミス博士は、この惨事につけ込む方法を見いだす。
「ルーミスは愉快な役だ。今回は、彼の前作とは全く違った一面が見えるんだよ。彼は異常に自惚れが強いんだ。私なら、マイケル・マイヤーズの後は追わないよ。それはここでは保安官の仕事だ。ルーミスは自分が書いた本のPRで全国をまわっているが、それは前回の惨劇から得たものだ。おいしい役柄だよ」彼は、自分が再び演じるルーミス役が、非常に現代的であること、且ついかがわしい動機で動き回るそこら辺の医者をあざ笑う存在であることに気付いた。
「神のような存在になりがちな医者たちの足をそっと引っ張るには、とても素晴らしい人物だと思う。我々は医者の言うことを全く信じてしまうけれど、度々彼らはひどい間違いを犯すからね」ルーミスの目には、マイケルの起こす惨劇が恐ろしい事件ではなく、別のものに映る。
「この好機に金が稼げる、と思いつくんだ。彼は高級ホテルを渡り歩き、リムジンを乗り回す金持ちだが、内面は空っぽで腐っている。それで彼は、心の隙間を金で補おうとしているのさ」
本作で悪役として再び出演する彼は息巻いて言う。
「ロブ・ゾンビはこの作品で第1作を超える強烈なスリルを見せてくれた。期待以上のものを生み出したんだ。人殺しもテンションが上がっていて、ねちっこく汚い殺し方ばかりなんだ。マイケル・マイヤーズは帰ってきた。今まで以上に大きく、悪くなって復活したんだ」
「ローリー・ストロードは、トラウマを抱えている。だからこそ、弧を描くように狂気の世界へと巻き込まれていくんだ。まるで魔術に導かれるように、邪悪で陰湿な事が彼女の身に起きていき、ゆっくりと精神的に壊れていく」
数々の難題が待ち受けるであろうにもかかわらず、ローリー役を再び演じる為にスカウト=テイラーはジョージア州へ喜んで向かったと言う。
「私たちは大家族みたいなものなの。新しい作品を撮り始める時に、スタッフやキャストの皆を既に知っているというのは素晴らしいことよ。一緒にふざけて楽しむの」
マイケル・マイヤーズの世界を再構築したロブ・ゾンビの創造力により、デボラ・マイヤーズとしてまさかの再出演を果たしたシェリ・ムーン・ゾンビ。
「『ハロウィン』第1作で、デボラは既に死んでいたわ。『もう二度とやらない』と、あの時は思ったのだけどね」第1作からストーリーを更に展開させる為、ロブ・ゾンビは『ハロウィンII』に幻想的な要素を加えた。葛藤を抱えた殺人鬼の心の中に、母親のデボラ・マイヤーズがいることで、マイケルという役柄に今までにない奥行きが生まれた。「ロブの描き方は非常に素晴らしいわ。マイケル・マイヤーズの目を通してデボラが描かれるところは、それはそれは不気味よ」
前作の『ハロウィン』はもちろん、『マーダー・ライド・ショー』『デビルズ・リジェクト〜マーダー・ライド・ショー2』でもメイキャップアーティストをつとめたウェイン。理屈抜きで怖いものを作るため、今回はアプローチを変えたと言う。
「前作より更に大胆で、現実的だ。昨今のホラー映画は、面白いけどやり過ぎなものが多い。それに対して我々は、覗き見的なアプローチを取り入れたのさ。手間はかかったけど、前作と比べると、一歩先を行っているよ。」