父には息子が、息子には父がすべてだった。
それぞれが、相手の世界となって−−。
世界の終わりは、ある日突然やってきた。いかなる天変地異や核戦争のような厄災に見舞われたのか、今となっては原因すら定かではない。人類が築き上げた文明は呆気なく壊滅し、作物は枯れ果て、生き物は死に絶えた。太陽は灰色の空の向こうに隠れ、凍てついた大地は断末魔の叫びのような地鳴りを繰り返している。
そんな大惨事を生き延び、南の地を目指して旅する一組の親子がいる。父親は少年をひたむきに守り、少年は父親をまっすぐに信じていた。極度の飢えと寒さに苦しみながらも、少しでも人間らしく生きようとするふたりは、人類最後の希望の灯を未来へと運ぶかのように、荒れ果てた世界をただ歩き続ける。はたして、その"道"はどこに繋がっているのだろうか……。
アカデミー賞4部門に輝くコーエン兄弟の『ノーカントリー』(07)に、原作小説「血と暴力の国」を提供した現代アメリカ文学の巨匠コーマック・マッカーシー。彼がそれに続いて2006年に発表し、全米ベストセラーとなったピュリッツァー賞受賞作が「ロード」である。その映像化不可能とさえ思われた壮大にして深遠な世界観の完全映画化を実現し、観る者の心を揺さぶってやまない奇跡的ロードムービーが誕生した。
文明崩壊後の終末世界を描いた映画は数多く存在するが、『ザ・ロード』はそのどれにも似ていない。主人公は何ひとつ特別な力は持たず、ぼろぼろに朽ち果てた大陸を旅する親子。灰色の絶望に染まったその極限世界は、わずかな生存者の理性を容赦なく奪ってきたが、父親と少年は決して人間性を失わず"善き者"であり続けようとする。
我が子を抱き締めることで愛情を伝え、身を危険にさらしてまで強さを示そうとする父親。その教えを胸に刻み、生命や希望の象徴というべき"火"を運ぼうとする少年。そんな父と子のかけがえのない絆と魂の軌跡を描き上げたこの映画は、コーマック・マッカーシーの作品としては異例の優しさや温もりが息づく原作小説のスピリットを鮮烈に伝え、身震いするほどの深い感動を呼び起こす。
また『ザ・ロード』はヴィジュアル面においても、しばし脳裏に焼きついて離れないインパクトで観る者を圧倒する。スクリーンに次々と出現するこの世のものとは思えない荒涼とした風景の数々は、スタッフが全米各地をハンティングして見出した実在のロケーション。それら残酷なまでにプリミティヴな風景は、テロや地球温暖化などの問題にさらされた現代人を不穏なサスペンスに巻き込みながらも、時に詩的な情緒を漂わせる。かくしてこの映画は、鋭い社会批評をはらむ寓話であり、荘厳な神話ともピュアなおとぎ話とも捉えうる豊かで奥深い作品となった。
ハリウッドの多くの業界人がマッカーシーの小説に魅了されながらも、さまざまなハードルの高さゆえに映画化に二の足を踏んだこの企画は、『ロード・オブ・ザ・リング』(01〜03)3部作や『イースタン・プロミス』(07)で名高いヴィゴ・モーテンセンの存在なくしては実現不可能だった。いかなる試練に直面しようとも、たったひとりの我が子を命懸けで守り抜く父親の揺るぎない包容力を体現。撮影中はあえて役づくりのためにロケ地の過酷な自然環境に身を投げ出し、自らを追い込んでいったという渾身の演技は、ただならぬ迫力をみなぎらせている。
さらに驚嘆すべきは、もうひとりの主人公の少年に扮したコディ・スミット=マクフィーである。オーディシヨンで抜擢された撮影当時11歳の小さな天才俳優は、全編にわたって寄り添い合ったモーテンセンに「これまでの映画を振り返ってもコディほど優れたパートナーはいない。彼は特別で、驚異的な俳優だ」と言わしめる名演技を披露。無垢な瞳と澄んだ心を持つ天使のような少年を、みずみずしく繊細に演じきった。
短い出演シーンで確かな印象を残す共演陣の顔ぶれも充実している。父親と少年が旅のさなかに一夜だけの交流を持つ老人役は、『ゴッドファーザー』(72)、『クレイジー・ハート』(09)やアカデミー賞主演男優賞を受賞した『テンダー・マーシー』(82・V)などで知られる名優ロバート・デュヴァル。『L.A.コンフィデンシャル』(97)、『メメント』(00)の実力派俳優ガイ・ピアースが、『ハート・ロッカー』(08)に続いてあっと驚く投どころで登場するのも見逃せない。随所に挿入される父親の回想シーンのパートには、痛切な運命をたどる妻役で美しきオスカー女優シャーリーズ・セロンがお目見えする。
そして本作の映画化権を獲得したプロデューサーのニック・ウェクスラーが、自信を持ってメガホンを託したのはオーストラリア出身のジョン・ヒルコート監督。日本未公開ながら、2005年のバイオレンス・ウエスタン『プロポジシヨンー血の誓約一』(05・V)で世界的に絶賛された注目の気鋭が、簡潔にして風格すら感じさせる演出力を発揮し、雄大なスケール感あふれる映像世界を創造した。
その父親と少年はただ黙々と歩き、南を目指して旅をしていた。空は日に日に濃くなる灰色に覆われ、あらゆるものが朽ち果てた地上には生き物がまったく見あたらない。夜は恐ろしいほどの暗黒の闇に支配され、時折凄まじい地鳴りが沸き起こる。ふたりが南に向かっているのは、極度の寒冷化のせいでこのままでは冬を越せそうないからだ。ショッピングカートを引きながら荒廃した風景の中をとぼとぼと進む彼らの全財産は、防水シート、ポリ袋、毛布、双眼鏡、そして拳銃だった。文明が崩壊して10年以上経ったこの世界では、わずかな生存者の誰もが燃料と食料を探し求めている。しかし道すがら民家を探索しても、食べ物は滅多に見つからない。
そんなある日、道ばたの車中で寝ていた父親は何かが迫りくる気配を感じとり、少年とともに林の中に身を隠す。トラックこ乗ったならず者の武装グループだった。林に入ってきた若い男に見つかってしまった父親は、拳銃で相手を威嚇する。若い男は一瞬の隙を突いて少年の首もとにナイフを突きつけるが、父親が放った銃弾を浴びて即死。父親は返り血を浴びて放心状態の少年を抱きかかえて走り、一味の執拗な追跡を振りきった。飢えを凌ぐために蛮行を繰り返すならず者たちは、この世で最もおぞましい人食い集団なのだ。
餓死するか、自殺するか、または道徳と理性を失ったならず者たちの餌食になるか。この非情な世界を生き抜くために、父親は少年にありとあらゆる大切なことを伝えようとしていた。父親にとって、少年はすべての心のよりどころだった。
父親は眠りに落ちるたびに、少年の母親がまだ生きていた在りし日の夢を見る。かつて彼らは、何が起こったのかもわからぬまま世界の終焉の日を迎えた。重い心の病を患っていた彼女は、自宅で少年を産んだのち、しばらくして暗闇の彼方に消え、自ら命を絶ったのだ。夢から覚め、はかない思い出に涙があふれた父親は、過去と決別するために彼女の写真と結婚指輪を捨てるのだった。
あまりの寒さと飢餓感に挫けてしまいそうな旅の中にもほっと心のなごむ瞬間があった。スーパーマーケットで見つけた缶コーラを飲んだ少年は、生まれて初めて口にした炭酸の泡を不思議がりながら「おいしい」と言った。滝で水浴びをした時は、初めて見た虹をきれいだと思った。ならず者集団の"貯蔵庫"がある家に忍び込んだ時には命が縮む思いを味わったが、少年は健気に父親の教えを反復した。
ふたりはとある民家の庭で、地下シェルターの入り口を発見した。そのちっぽけな空間には、ふたりでは食べきれないほどの豆やフルーツの缶詰、お菓子、飲み物が蓄えられていた。少年は「これ、全部もらっていいの?お礼を言わなくちゃ」と言って、どこの誰かもわからない贈り主に感謝の祈りを捧げた。ふたりは体を洗い、髪の毛を切り、ろうそくの灯りのもとでの豪華なディナーで思う存分、空腹を満たした。
しかし幸せな時間は長く続かなかった。シェルターの外でうろつく何者かの気配を察知した父親は、嫌がる少年をなだめ、持てる限りの食料をカートに積んで再び旅に出る。
ふたりは杖をついて歩いている弱々しい老人に出くわした。「食べ物を分けてあげようよ」と言う少年に根負けした父親は、しぶしぶ老人を夕食に誘う。イーライと名乗るその老人は目が悪かったが、少年を見て天使が現れたのかと思った。その一方で「悪者には気をつけろ」と教えられていた少年は、なぜ父親がきっと善い者に違いない老人に冷たい態度をとるのか理解できなかった。
なおも歩き続けるふたりは丘を越え、ついに浜辺にたどり着く。海は青いものだと思っていた少年は、見渡す限り寒々とした灰色の光景にがっかりした。そして夜になると、ひどい熱を出して嘔吐した。
この時すでに肉体が衰弱しきっていた父親は激しく咳き込むようになり、もう先行きが長くないことを感じとっていた。廃墟の町で何者かが放った矢で足を射抜かれたせいで、カートさえも引っ張れなくなった。もはや精根尽き果てて浜辺に横たわった父親は、少年にそっと語りかける。
1958年、ニューヨーク州マンハッタン生まれ、デンマーク人の父親とアメリカ人の母親に育てられ、南米などさまざまな国での海外生活を経験したのち、高校時代に演技に興味を抱く。卒業後は演劇学校に進み、舞台の経験を積んだ。ピーター・ウィアー監督作品「刑事ジョン・ブック/目撃者85)の若いアーミッシュの農夫役で映画デビュー。その後はショーン・ペンの初監督作品『インディアン・ランナー』(91)で演じたベトナム帰りの青年役で高い評価を得るなど、数多くの話題作に出演している。とりわけその名を広く知らしめたのは、ピーター・ジャクソン監督によるファンタジー超大作『ロード・オブ・ザ・リング』3部作(01〜03)の勇者アラゴルン役。また『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)に続くデヴィッド・クローネンバーグ監督との2度目のコンビ作『イースタン・プロミス』(07)では、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の主演男優賞にノミネートされた。詩、写真、絵画を手がけるマルチ・アーティストとしても知られている。そのほかの主な出演作は以下の通り。
『柔らかい殻』(90)、『プレイデッド』(93)、『カリートの道』(93)、『クリムゾン・タイド』(95)、『アルビノ・アリゲーター』(96)、『ある貴婦人の肖像』(96)、『デイライト』(96)、『G.I.ジェーン』(97)、『サイコ』(98)、『ダイヤルM』(98)、『オーバー・ザ・ムーン』(99・未)、『オーシャン・オブ・ファイヤー』(04)、『アラトリステ』(06)、『アパルーサの決闘』(08・未)。
1996年6月13日生まれ、オーストラリア出身。演劇一家の出身で、同国の人気TV番組「Neighbours」などで知られる女優シアノア・スミット=マクフィーを姉に持つ。リチャード・ロクスバーグ監督作品『ディアマイファーザー』(07・V)の演技で注目され、オーストラリア・フィルム・インスティテュートのヤングアクター賞を受賞し、07年のオーストラリア映画批評家協会の最優秀新入賞に輝いた。その他には『Stranded』(05)や幾つかのTV作品、舞台「Walkabout」などに出演している。7月に日本公開されるスウェーデンのヴァンパイア映画『ぼくのエリ200歳の少女』をマット・リーヴス監督がハリウッドでリメイクした『Let Me ln』では主演を務める。今秋全米公開予定。現在は家族とともにメルボルンに住み、スケートボードやコンピューターでの音楽作りを楽しんでいるという。
1931年1月5日生まれ、米カリフォルニア州サンディエゴ出身。海軍で2年間の従軍を経験したのち、ニューヨークで演技の道に進み、舞台やTVに出演する。映画デピュー作は『アラバマ物語』(62)。巨匠フランシス・フォード・コッポラとのコラボレーションで知られ、『雨のなかの女』(69)、『ゴッドファーザー』(72)、『カンバセーション…盗聴
…』(73)、『ゴッドファーザーPARTII』(74)、『地獄の黙示録』(79)で重厚な存在感を放った。『ゴッドファーザー』『地獄の黙示録』でアカデミー賞助演男優賞、『パパ』(79)で同主演男優賞の候補となり、『テンダーマーシー』(82・V)で初めてアカデミー賞主演男優賞を獲得。現在に至るまで、ハリウッドの名バイプレーヤーとして活躍している。その他の主な出演作に『ネットワーク』(76)、『告白』(81)、『ライトシップ』(85)、『ランブリング・ローズ』(91)、『ディープ・インパクト』(98)、『シビル・アクション』(99)、『愛と暗殺のタンゴ』(02・未/監督・製作・脚本も)、『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』(03)、『ウォルター少年と、夏の休日』(03)、『サンキュー・スモーキング』(06)、『アンダーカヴァー』(07)、『クレイジー・ハート』(09)など。
1967年10月5日生まれ、英ケンブリッジシャー出身。3歳の時に空軍パイロットだった父親の赴任先のオーストラリアに移住する。少年時代から俳優を志し、1986年から4年にわたりTVドラマ「Neighbours」に出演。 1990年代初頭から映画にも出演するようになり、世界的な反響を呼んだ『プリシラ』(94)のドラァグクイーン役で脚光を浴び、ハリウッド進出作『L.A.コンフィデンシャル』(97)の若手刑事エド役で絶賛された。その後はクリストファー・ノーラン監督のフィルム・ノワール『メメント』(00)、SF冒険大作『タイムマシン』(02)、『ザ・ロード』のジョン・ヒルコート監督によるバイオレンス映画『プロポジションー血の誓約一』(05・V)といった幅広いジャンルの作品で主演を務めている。その他の主な出演作は『ラビナス』(99)、『英雄の条件』(00)、『記憶のはばたき』(01)、『トエンティマン・ブラザーズ』(02)、『モンテ・クリスト伯』(02)、『トゥー・ブラザーズ』(04)、『ファクトリー・ガール』(06)、『奇術師フーディーニ〜妖しき幻想〜』(07・V)、『ベッドタイム・ストーリー』(08)など。本年度アカデミー賞6部門を制した『ハート・ロッカー』(08)の冒頭で意外な役どころを演じていたことも)記憶に新しい。
1975年8月7日生まれ、南アフリカ出身。バレエを学ぶためにニューョークに移住するが、足のケガでその道を断念し、ロサンゼルスで女優を目指す。『2 days トゥーデイズ』(96)の大胆な演技で注目され、『ディアボロス/悪魔の扉』(97)、『セレブリティ』(98)、『マイティ・ジョー』(98)、『サイダーハウス・ルール』(99)、『ノイズ』(99)などの話題作に次々と出演。順調にキャリアアップしながら演技力にも磨きをかけ、実在のシリアルキラーを演じた『モンスター』(03)では初のアカデミー賞ノミネートにして主演女優賞に輝いた。『スタンドアップ』(05)でも再び同賞の候補に名を連ねるなど、美貌と実力を兼ね備えたトップ女優の地位を揺るぎないものにしている。その他の主な出演作に『裏切り者』(00)、『バガー・ヴァンスの伝説』(00)、『レインディア・ゲーム』(00)、『スウィート・ノベンバー』(01)、『コール』(02)、『ミニミニ大作戦』(03)、『トリコロールに燃えて』(04)、『ライフ・イズ・コメディ!ピーター・セラーズの愛し方』(04)、『イーオン・フラックス』(05)、『バトル・イン・シアトル』(07・V)、『告発のとき』(07)、『ハンコック』(08)、『あの日、欲望の大地で』(08)など。
1961年、オーストラリア・クイーンズランド生まれ。アメリカ、カナダ、イギリスで育ち、オーストラリアのスウィンバーン・フィルムスクールに入学。同校で2本のドラマを制作したのち、ニック・ケイヴ、インエクセス、クラウデッド・ハウス、デペッシュ・モード、ロバート・プラント、ミューズなどのアーティストの音楽ビデオの監督、編集を務めて成功を収めた。なかでもレイザーライトのビデオでは複数の国際的な賞を受賞している。そしてアメリカとオーストラリアで最高級警備の刑務所を3年間調査し、初の長編映画『亡霊の檻』(88)を完成。砂漠に立つ刑務所の囚人たちの異様な姿を描いたこの映画は、オーストラリア・フィルム・インスティテュート賞9部門にノミネートされた。続いてパプアニューギェアを舞台にしたスリラー『To Have & To Hold』(96)を手がけたのち、ガイ・ピアース、レイ・ウィンストン、ダニー・ヒューストンらが出演した長編第3作『プロポジションー血の誓約一』(05・V)を発表。オーストラリア版西部劇とも言われるこのバイオレンス映画は、オーストラリア・フィルム・インスティテュート賞で4部門、インサイド・フィルム・アワード(ピープルズチバス賞)で最優秀作品賞を含む4部門を制した他、数多くり賞を受賞した。
1933年、米ロードアイランド州生まれ。裕福な弁護士の家庭で育ち、4歳の時にテネシー州に移り住む。テネシー大学を中退後、1953年に入隊した空軍で4年間の従軍を経験。その後、大学に戻って作家としての創作活動に取り組み、1965年の「The Orchard Keeper」で長編デビューを果たした。「ブラッド・メリディアン」などを経て、"国境三部作"の1作目となった92年の「すべての美しい馬」で全米図書賞、全米批評家協会賞を受賞。この小説は2000年にビリー・ボブ・ソーントン監督、マット・デイモン主演で映画化された。そしで国境三部作の第2作「越境」、完結編「平原の町」に続き、05年には「血と暴力の国」を発表。コーエン兄弟がこの小説を映画化した『ノーカントリー』(07)は、アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚色賞、助演男優賞を獲得するなど大成功を収めた。自らの息子であるジョン・フランシス・マッカーシーに捧げた2006年の「ザ・ロード」はベストセラーとなり、ピュリッツァー賞のフィクション部門を受賞。トマス・ピンチョXン、ドン・デリーロ、フィリップ・ロスらと並び称される現代アメリカ文学の巨匠である。
カンヌ映画祭パルムドール受賞作『セックスと嘘とビデオテープ』(89)、全米批評家協会賞の作品賞に輝いた『ドラッグストア・カウボーイ』(89)を始め、製作および製作総指揮としてインディペンデントとスタジオの数多くの映画にかかわっている。その他の製作を手がけた主な作品は『ザ・プレイヤー』(92)、『裏切り者』(00)、『15ミニッツ』(01)、『スタンドアップ』(05)、『アンダーカヴァー』(07)、『帰らまい日々』(07)、『きみがぼくを見つけた日』(09)など。
ライオンズゲート社でエグゼクティヴ・バイス・プレジデントを務めたのち、2005年に設立された2929プロダクションの社長に就任した。
これまでの製作作品には、アカデミー賞で6部門にノミネートされたジョージ・クルーニー監督&主演作『グッドナイト&グッドラック』(05)を始め、『ドリームズ・カム・トゥルー』(06・V)、『アンダーカヴァー』(07)、『あの日、欲望の大地で』(08)、『ダイアナの選択』(08)など。
ジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』(89)、『ナイト・オン・ザ・プラネット』(91)のライン・プロデューサーとして映画界に参入。その後も数多くの良質な作品に携わっておリ、製作もしくは製作総指揮としてクレジットされた主な作品は次の通り。『デッドマン・ウォーキング』(95)、『ハイロー・カントリー』(98)、『ハイ・フィデリティ』(00)、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)、『ライフ・アクアティック』(05)、『アクロス・ザ・ユニバース』(07)。
才能あふれる映両脚本家であり、数多くの舞台、TV作品の脚本も手がけている。映画の代表作はイアン・マキューアンの小説「愛の続き」に基づくサスペンス劇『Jの悲劇』(04)で、同作品では全米批評家協会賞の脚本賞を受賞した。その他の映画には『Some voices』(00)、自ら監督も務めた短編『The Undertaker』(05)がある。舞台「Blue/Orange」ではオリヴィエ賞、イヴニング・スタンダード賞と批評家協会賞の最優秀賞を獲得。最近ではBBCのTVミニ・シリーズ「Moses Jones」の製作総指揮、脚本を務めた。
才能あふれる映両脚本家であり、数多くの舞台、TV作品の脚本も手がけている。映画の代表作はイアン・マキューアンの小説「愛の続き」に基づくサスペンス劇『Jの悲劇』(04)で、同作品では全米批評家協会賞の脚本賞を受賞した。その他の映画には『Some voices』(00)、自ら監督も務めた短編『The Undertaker』(05)がある。舞台「Blue/Orange」ではオリヴィエ賞、イヴニング・スタンダード賞と批評家協会賞の最優秀賞を獲得。最近ではBBCのTVミニ・シリーズ「Moses Jones」の製作総指揮、脚本を務めた。
卓越したイギリス人編集者として知られ、マイク・リー監督の『ライフ・イズ・スイート』(91)、『ネイキッド』(93)、『秘密と嘘』(96)、マイク・ニューウェル監督の『フオー・ウェディング』(94)、『フェイク』(97)、『狂っちゃいないぜ』(99)などが代表作。その他、『ペネロピ』(06)やTVミニ・シリーズ「トラフィック!ザ・シリーズ」「南仏プロヴァンスの12か月」などを手がける。ジョン・ヒルコート監督とは前作『プロポジジョンー血の誓約一』(05・V)に続くコラボレージョンとなる。
コーマック・マッカーシーの大ファンである製作のニック・ウェクスラーは「ザ・ロード」の権利を原稿の段階で取得した。「幸運だったのは、内容が非常に暗く冷酷だったため、スタジオや他の製作者たちが映画化できるのかどうか確信が持てず、慎重なアプローチを取ったことだ。おかげで作品の権利を取得することができたんだ。小説をもらったその晩に読んだが、極めて感動的な経験たった。これは父と息子の物語で、ふたりの旅であり、炎の受け渡しであり、人間とは何かについて学び合う物語だ。また優れたサスペンスでもあり、敵対的な世界で生き延びなければならない緊張感は映画化にふさわしい要素だった。終末論的な世界、そこでの食人の習慣は冷酷だが、まったく不安はなかった。作品の核心は感動的で、とても新鮮で力強く、映画の製作過程でそれがずっと輝き続けると確信したからだ。
ウェクスラーが監督として指名したのは、前作『プロポジションー血の誓約一』(05・V)で高い評価を得たジョン・ヒルコートだった。ヒルコートは語る。「私がコーマック・マッカーシーとその作品を好きなのは、彼が断固たる姿勢で人間性の深みを探求しているからだ。人間が本当はとても恐ろしい存在で、人間自身がこの星全体の最大の敵であり、これまでもこれからも常にそうであることから目を逸らしていない。そしてこの本の特別な点は、物語の核心にある父親と息子の間の感情的な豊かさや優しさだ。舞台となる世界では、実際に何が起きたのか、その話や経過は書かれていないし、それらは語られるべきではない。なぜならそれが核であろうと彗星であろうと、どんな理由であれ、大災害が起きたら原因など無関係になるからだ。その日から人々は根本的な変化と闘う。その不安定攻状態の描き方が独創的で非常に忘れがたく、私は心をかき乱された。今の時代にはとても現実的で、特に関連性が高いと感じたんだ」。
ヴィゴ・モーテンセンは『ザ・ロード』の脚本を読み、この役を演じないことは考えられなかったという。「この物語は普遍的だ。子供を持つ親なら誰だって、"もし自分がそばにいなかったら"という感情、不安を持っている。しかもこの作品の世界では、誰かがどうにか子供の世話をしてくれるというわけではない。誰もいない。ゼロだ。自分が死んだら子供は世界にひとりぼっちになる。それほどの極限状態でも人々は家族を気にかけている」。終末後の世界を生き延びられる人物がいるとすれば、ヴィゴだと監督は語る。「彼はとても強く、情熱的で、この父親そのものだ。妻を失った悲しみの中で、息子を守り通すという信じられない状況にいながら、優しさを伴った確かな行動を取るんだ」。ヴィゴは役を引き受けると、集中的な準備期間に入り、小説の世界とその仮説上の状況に浸った。調査は本や資料を読むだけに留まらす、ホームレスの生活パターンや習慣にも及んだ。さらにコーマック・マッカーシーとも会談。話題のほとんどはマッカーシーが本を捧げた息子、ジョン・フランシスとの関係についてだった。ヴィゴが語る。「私たちは彼の息子さんとの関係について話をし、私は自分の息子のことや、息子が本の登場人物の年齢だった時、どんなふうだったかを話した。そして、自分が家族や人間関係についてどう感じたか考えていったんだ」。
さらにヴィゴは役柄の内面を作り上げるだけでなく、周囲の環境を取り込みながら体当たりの演技を実践していった。製作総指揮のラッド・シモンズが証言する。「ヴィゴは雨が降っていても傘やレインコートを使わなかった。用意されたテントや毛布を拒み、意図的に体を冷やし、濡れるようにして、極限状態を作り出していったんだ。雪や雨、寒さや霧の中で何度もそのようにしているのを見てきたよ。彼は登場人物の世界に没頭し、その感情を引き出すために、使えるものは何でも使う俳優なんだ」。ヴィゴはさらに、撮影の最初の数日間衣装を着たまま寝ていたという。
『ザ・ロード』を完成させるには、息子役のキャスティングが極めて重要だった。撮影は過酷になるため、辛抱強くついてこられるだけの天性の俳優である必要があった。キャスティングのプロセスは徹底的に行われ、アメリカ全土とカナダの数百人の少年たちが審査された結果、演劇一家に生まれたコディ・スミット=マクフィーがこの役を勝ち取った。
コディを選んだことは、彼がカメラに慣れていること以外にも多くの点で理に適っていた。製作者たちや共演者のヴィゴは、この若い俳優の才能、プロ意識、仕事への倫理観に面喰らってしまった。ヴィゴが語る。「コディの演技は歴史に残ると思う。正直言って、この映画は人々の記憶に何年もずっと残る1本になる。初めて脚本を読んだ時、私は"これまでで最高の子役、この役を演じられる世界最高の子役を見つける必要がある"と思った。コディのような優秀な俳優がいたことで、素晴らしい映画になったし、彼との共演を本当に楽しんだよ」。
劇中には、ヴィゴとコディの間に絆ができたことを示す重要なシーンがある。ギャングに遭遇し、父親は息子を守るためにその男を撃ち、小川の凍てつく水で息子の髪を洗おうとする。そのシーンでクルーは驚愕した。ラッド・シモンズが振り返る。「小川の雪解け水はおそらく摂氏7度ぐらいの冷たさだった。ヴィゴがコディを抱え上げて彼の頭を水につけると、あまりの冷たさにコディは震え上がり、痛さとショックで泣き出してしまった。するとヴィゴはコディを両腕に抱き上げてすぐ日差しの下へ行き、揺すって彼を正気に戻してあげたんだ」。ヴィゴが続ける。「彼は自分の役を見失っていなかった。私をパパと呼んで本当に泣いていたが、シーンを演じきっていた。そんな俳優だ。自分をどんどん鼓舞し、私を鼓舞し、全員を鼓舞してしまう」。
チームの使命は、荒廃した世界の恐ろしさを伝えることだったとヒルコート監督は語る。「終末後を描いたジャンルの定型とも言うべき『マッドマックス』のような世界は避けたかったので、原作の世界に想像をめぐらせた。浮かんできたのは、買い物用カート、スキージャケット、ビニール袋、テープを巻いた靴といったもの、そして世界中の全主要都市にいるホームレスたちだった。彼らはお金や食べ物を持たず、ストリートで日々生き延びるために終末的な世界を生きているのだから」。
父と息子は山岳部を出発して国を横切り、丘を越え、最後に海へと到達する。地球全体が大きな災害地域であるため、撮影にはできる限り寂れて、荒れ果てた場所を見つけなくてはいけなかった。 50ヵ所以上の場所が候補に挙がり、ペンシルバニア州を拠点として撮影は進められた。また、この作品では明るい日光が皆無となった地球を表現する必要があった。通常のクルーは晴天の日なら大喜びするところだが、この映画のクルーはがっかりして屋内での撮影に向かった。プロダクション・デザイナーのクリス・ケネディが語る。「極寒の天候のひどい条件下での仕事で、雪や雨が降っていると最高だった。そんな日は私たちは外へ走り出たよ。これは環境を扱った映画で、本物の環境を舞台に強いる。撮影のハビエル・アギーレサロベは"太陽は我々の敵だ"と言っていたよ」。
監督は旱い段階から、CGで作った映像の使用を最小限に留める決断をしていた。あったとしても、撮影フィルムの加工において幾つかの色を出すために、初歩的なデジタル操作を加えたものだけだった。アギーレサロベが語る。「この映画では、光にも、実物を使った物にも手が加えられていない。私は観客が映画館を出る時、このようなことが地球や自分たちに起きる可能性があることについて考えてもらいたい。もし観客がこの作品を観て物語の真実性を信じてくれたら、その時この映画は最大の勝利を得ることになるんだ」。