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2010年6月、日本に衝撃的なニュースが広がった。"みひろAV引退"。次から次へと新人がデビューし、女優の命は1年~2年が通例の狭く険しいAV業界で、みひろは長期に渡り常に第一線で活躍し続け、映画や舞台、深夜番組などにも出演している、言わずと知れた国民的AV女優である。なぜ、彼女はこんなにも愛されるのか?そんな彼女が、今まで語ることのなかったAV女優の道を選んだ真相、そこに秘められた不安や葛藤を赤裸々に書き下ろした私小説「nude」。講談社ガールズにてWEB連載、若い女性を中心に大反響を呼び、講談社より2009年5月に書籍化。同年10月には別冊ヤングマガジン(現:月刊ヤングマガジン)にて漫画連載がスタートし、人気投票でも一位を獲得。2010年5月にはコミック第一巻が発売、そしてこの度待望の映画化となった。守りに入りがちなこんな時代だからこそ、夢をかなえる為、苦しい現実にも耐えながら頑張り続ける彼女の姿に、深く感銘を受けるであろう。

田舎町で生まれ育った山瀬ひろみは高校卒業とともに上京し、芸能人になりたい一心でAVには出演しないことを条件に、ヌードモデルへの誘いを受ける。次第に演技の仕事も増え、女優になりたいと前にも増して強く思うようになるひろみだったが、恋人の英介や親友のさやかから猛反対され、周囲からだんだんと孤立していく。次のステップの為に悩みながらも、「絶対に絶対に絶対に女優になるんだ!!」と心に誓い、AVに出演することをひとりで決めてしまうが、そこには想像を絶する試練が待ち受けていた...。

本作でみひろ役を演じるのは、『東京大学物語』(06)にてデビュー、窪塚洋介がカメラマンを務めた「月刊渡辺奈緒子」(新潮社)が話題を集め、『リアル鬼ごっこ2』(10)、北野武監督作品『アウトレイジ』(10)など話題作の出演が相次ぎ、本作で映画初主演となる渡辺奈緒子。体当たりの演技に加え、主人公の複雑な心理描写を見事に演じきった。みひろをスカウトする榎本役には、『めがね』(09)『カイジ人生逆転ゲーム』(09)など、名脇役として活躍中の光石研。さらに、親友のさやか役には『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)『悪夢のエレベーター』(09)の佐津川愛美、恋人の英介役を『ガチンコ疾走上等』(10)で主演を務めた永山たかしなど、実力派俳優が顔を揃える。監督は『童貞放浪記』(09)や『結び目』(10)など、人の心情を描くことに定評がある俊英、小沼雄一。ひとりの若い女性が悩みながらも自ら決断し、前を向いて歩いてく強さを丁寧に描き出した。

新潟の高校を卒業し、大親友のさやかと別れ、恋人の英介とともに上京して、空港の警備員として働くようになった山瀬ひろみ。芸能人になりたいというおぼろげな夢を持ちながら、都会でのなれない日々を過ごしていた。

ある日、スカウトマンらしき男が若い女性に声をかけているのを見かけたひろみは、自ら彼に近づきスカウトされる。舞い上がって話を聞きに行くが、それは実はヌードモデルへの勧誘だった。はじめは受け入れられなかったが、今の仕事よりは少しでも夢に近づくのではと思い、空港の仕事をやめ、AV出演はしないことを条件にヌードモデルになることを決意する。

戸惑いながらも、周りのスタッフのプロフェッショナルな対応、そして今まで経験したことのないスタジオ撮影が、少しずつ楽しくなっていく。事務所の先輩女優に"みひろ"という芸名も付けてもらい、仕事に誇りを持ち始めた矢先、同棲を始めた英介に自分がグラビアを飾った雑誌が見つかって咎められてしまう。地元でもヌード写真が出回り、さやかからは「あんた最低だね」と言われる。苦しい時にこそ近くにいてほしい人、理解してほしい人たちからも、だんだんと孤立していく中、ひろみは耐えきれず撮影中にトイレに引きこもってしまうのだった。そんな時「私も、その気持ち知ってる。でもね、あなたはプロなんだよ」という先輩女優からのアドバイスを受け、再びやる気を取り戻す。その後、あっと言う間に事務所では一番の売り上げを誇るようになるが、だんだんヌード以外の演技の仕事がしたい、女優になりたい、と強く思うようになっていく。

Vシネマの仕事が徐々に増えていき、あくまで演技の延長と考え「カラミ」という裸での疑似セックスシーンも沢山こなしていくひろみ。そんな中、裸の仕事を続けていることを言えないまま、英介からプロポーズされる。嬉しい反面、せっかく掴んだチャンスを棒には振れず、一人悩む日々が続いていく。そんな時、マネージャーがテレビの仕事の面接をとりつけてくれた。しかし、どうにかいい様に自分を見せようという気持ちが裏目に出てしまい、うまくいかない。女優としてステップアップしていくことが出来ず、ジレンマを抱えながらもヌードとVシネマの仕事をこなしていくが、ある日大物プロデューサーから「きみは中途半端だね」と、AV出演を勧められる。

悩み、苦しみながらも、知名度と人気を得るためにAVに出演することをひとりで決めてしまうひろみ。「絶対に絶対に絶対に有名人になってやるんだ」。その決意は、決して揺るがないものだと思っていた。しかし、その決断の先には、想像をはるかに超えた試練が待ち受けていたのであった...。

1984年7月30日生まれ、神奈川県出身。江川達也監督作『東京大学物語』(06)にてデビューして以来、『リアル鬼ごっこ』(08)、『少林少女』(08)など話題作へ出演が相次ぐ。2008年のフランソワ・ジラール監督の日本=カナダ=イタリア合作『SILK』に出演し話題となる。そして、2009年、窪塚洋介がカメラマンを務めた「月刊渡辺奈緒子」(新潮社)がきっかけとなり、本作での映画初主演に大抜擢。体当たりの演技に加え、主人公の複雑な心理描写を見事に演じきった。2010年も柴田一成監督作『リアル鬼ごっこ2』、北野武監督『アウトレイジ』、阪本順治監督『行きずりの街』など、幅広い役柄に挑戦し続ける若手実力派女優である。

1961年9月26日生まれ、福岡県出身。1978年、曽根中生監督『博多っ子純情』でデビュー後、日本を代表する名監督たちの作品に数々出演し、今や日本映画界においてなくてはならない個性派俳優。出演作は、映画だけでも『EUREKAユリイカ』(01)、『ハッシュ!』(01)など100本以上。1999年、テレンス・マリック監督『シン・レッド・ライン』など海外作品への出演も多い。主な近作に『紀子の食卓』(06)、『それでもボクはやってない』(07)、『サッドヴァケイション』 (07)、『めがね』(07)、『20世紀少年』(08)、『カイジ人生逆転ゲーム』(09)、『猿ロックTHEMOVIE』(10)、『悪人』(10)

1988年8月20日、静岡県出身。05年に『蝉しぐれ』でスクリーンデビュー、新人としては異例のブルーリボン賞助演女優賞ノミネートを果たす。第60回カンヌ国際映画祭にも出品された『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(』07)ではブルーリボン賞助演女優賞と新人賞にWノミネートされる。また、数多くの短編映画にも出演し、10年7月には横浜ブリリアショートショートシアターにて「佐津川愛美短編映画特集」が組まれる。今後も『電人ザボーガー』(11)などの公開待機作が多数ある。

1978年11月16日生まれ、神奈川県出身。ミュージカル「テニスの王子様」への出演をきっかけに、舞台、ドラマ、映画などで幅広く活躍する若手実力派。一方、自ら作詞、作曲も行い、精力的にライヴ活動も行っている。『ガチンコ疾走上等』(10)では映画初主演を務めた。主な出演作は、TV「正しい王子のつくり方」 (08)、「あり得ない!」(10)、「シバトラ~さらば、童顔刑事スペシャル~」(10)、映画『タッチ』(05)、『僕らの方程式』(08)など。

1974年8月11日生まれ、福井県出身。大阪芸術大学芸術学部映像学科在学中から自主制作映画に参加する。1999年、同大学の後輩である山下敦弘監督の卒業制作作品『どんてん生活』に主演。同作品がゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター部門でグランプリを獲得するなど国内外で高い評価を得たことで注目を集める。その後も『ばかのハコ船』(02)、『リアリズムの宿』(03)と、山下敦弘監督作品で主演をつとめるほか、2009年には小沼雄一監督『童貞放浪記』で主演を演じるなど、多くの監督の作品に出演し、日本映画界には欠かせない存在になっている。出演作に『イヌゴエ』(06)、『それでもボクはやってない』(07)、『グーグーだって猫である』(08)、『蟹工船』(09)、『色即ぜねれいしょん』(09)、『カムイ外伝』(09)など多数。

1965年12月3日生まれ、茨城県出身。大学卒業後映画を志し、映画監督今村昌平氏が創設した日本映画学校に入学。95年、日本映画学校の卒業制作として監督した映画『チャンス・コール』が今村昌平賞を受賞。同年、文芸座にて劇場公開を果たす。卒業後、井出良英、池田敏春、緒方明、行定勲等の監督のもと、助監督として現場経験を重ねたのち、03年に『自殺マニュアル2-中級編-』で商業監督デビュー。06年に公開された映画『AKIBA』は、東葛国際映画祭に正式出品されたほか、映画秘宝誌にて大槻ケンジ氏が同年のベストテンに選出するなど高い評価を受けた。主な監督作品に『童貞放浪記』(09)、『結び目』(10)がある。

1993 年 短編ドキュメンタリー「エミの唄」
1995 年 16mm 中編映画「チャンス・コール」
2003 年 映画『自殺マニュアル 2- 中級編 -』
2005 年 映画『ニューハーフ・ダンク』
2005 年 映画『ロザリオの雫』
2006 年 映画『夏の思い出』
2006 年 映画『AKIBA』(監督・脚本) ※東葛国際映画祭出品
2008 年 映画『真木栗の穴』(脚本) ※東京国際映画祭出品
2009 年 映画『童貞放浪記』 ※ゆうばり国際映画祭出品/あきた十文字映画祭出品
2010 年 映画『都市霊伝説 心霊工場』
2010 年 映画『結び目』

2010年5月2日 吉祥寺。リハーサル初日、渡辺奈緒子さんは全てのセリフがすでに頭に入っていた。ダンスを習っていたという渡辺さんは、背筋を伸ばしてきちんと歩くのが特徴的だ。まずはそのきちんとした歩き方ではなく"普通に歩く"というところから小沼監督の演技指導が始まった。初主演の渡辺さんの気合いのせいか、ついつい芝居に力が入ってしまう。「力を抜いて、セリフを言おうとしないで話して」等小沼監督の細やかな演技指導に渡辺さんも応えていく。

5月11日 リハーサルの合間を見て、衣装合わせ。今回の作品は、 東京に上京して数年間に渡る物語。主役の渡辺さんの衣装番数、 合計23着。高校時代の制服からV シネマシーンの天使コスチュー ムなど、バラエティーにとんだ衣装の数々。また、今回の演出意 図として、衣装、持ち道具、装飾の全てにおいて、赤とピンクは 一切排除。どんな世界観になるのか? 楽しみでもあり、準備パー トの苦労もヒシヒシと感じた。原作者のみひろさんと顔合わせを した渡辺さんは、一気にみひろさんファンになったようで、後日 マネージャーさんにみひろさんの魅力を力説していた。

5月17日
天気にも恵まれいよいよ飯田橋にてクランクイン。渋谷での撮影は、車も人も多く、大変だった。エキストラカットも丁寧に撮影する小沼監督。渋谷までの撮影を何とか撮りきり、参宮橋へ移動。ナイターシーンでは、別の作品と現場がバッティングしてしまうというハプニングもあり、急遽新宿へ移動。新宿にて1シーン残して本日の撮影終了。撮影初日、渡辺さんのいざ本番へ向かう、凛々しい立ち姿が印象的だった。表参道での撮影には、原作者のみひろさんがお菓子の差し入れをたくさん持って駆けつけてくれた。

5月18日
主人公のひろみが、はじめてAV撮影をする、本作品の大きな山となる一連のシーン。デリケートなシーンのため、必要最低限のスタッフのみ現場内へ。ベテラン男優・南条役の五刀剛さんの緊張も伝わって来る。大きなプレッシャーや緊張もあるであろうに、渡辺さんは終始笑顔で現場にいた。うちの主演女優は、強い。劇中のAVスタッフとしてエキストラ参加して頂いた皆さんは、普段映画やドラマで演出部、制作部、撮影部等々している方々。製作陣の仲間たちが集まってくれたので、現場の進行もスムーズに進んだ。

5月19日
中野新橋のハウススタジオでのAVシーンの撮影。大切な、作品の冒頭シーンの一連。晴天まではいかなかったが、美しいタイトルカットも無事撮影できた。撮影終了後、小沼監督と渡辺さんで役について話し合っている姿が印象的だった。

5月20日
新潟ロケ。新潟ロケといっても、主人公の出身地や親友たちが暮らす街の撮影ではなく、空港シーンの撮影のため、新潟空港へ向かう。新潟フィルムコミッションの協力の元、たくさんのエキストラさんが参加してくれる。

5月21日
横須賀ロケ。海関連のシーンを終日撮影。順調に撮影は進んでいたが、現場(黒崎の鼻)が、あまりの強風で本日の撮影を断念。後日撮影となる。しかし、風も強く寒い中でのナイター撮影は決行。半袖、短パン、波打ち際で膝まで波をかぶりながらの撮影だったが、渡辺さんはここでも笑顔を絶やさなかった。

5月23日
新潟の大学シーン。東京ビジュアルアーツの学生の皆さん、日活芸術学院の学生の皆さん、一般応募の皆さんと、とても多くの方にエキストラ参加して頂く。その後テレビ局のシーン、マイクロバスの一連の撮影。ひろみがマイクロバスに乗込む芝居を、10回以上行う。雨の中、一般応募のエキストラの皆さんも頑張ってくれた。OKが出た時、渡辺さんがエキストラの皆さんに「何度もすみませんでした。ありがとうございます!」と声を掛けていたのが印象的だった。

5月24日
原作者みひろさん出演シーン。「おはようございます!」と、とても元気な声で入ってきたみひろさん。いつも笑顔で元気なみひろさんに、現場スタッフも癒される。その後、場所を移動し榎本の事務所にてみひろさん演じる先輩女優が、ひろみに"みひろ"と名付けるシーン。みひろさんの思いが、伝わってくる、素敵なシーンとなった。このシーンをもってみひろさんオールアップ。5月19日がお誕生日だったみひろさんへ、小沼監督と渡辺さんからメッセージ付きの花束をプレゼント。続いて、山本浩司さん演じる佐藤プロデューサーとの重たいシーン。ひろみの表情を引き出すため、小沼監督は、とある方法で渡辺さんを演出した。その甲斐あって、動揺したひろみのリアルな表情がカメラに収められた。

5月25日
喫茶店で榎本と会うひろみシーンの撮影。渡辺さんの抜けに映り込むビルのノボリが赤く、急遽ノボリの撤去に制作部が走る。小沼監督の"赤"の排除は徹底している。ひろみと英介、2人のシーン。アパートという狭い空間の中、かなりの集中力と密度の濃い現場となった。

5月26日
ひろみのアパートのシーンの撮影。前日からゲリラ豪雨と雷の予報。外に出ようとすると、なぜ雨が降るのか。東新宿のひろみのアパートを終え、蔵前の現場へ移動直前に、とうとう雨が降ってきた。豪雨になるな!雷くるな!との祈りが届いたのか、普通の雨で何とかとどまり、無事撮影終了。

5月28日
Vシネマの撮影現場シーン。本作品中で最も異質(?)なシーンの撮影。大学受験を何浪もしている冴えない男のところに、ある日未来から天使がやって来る。天使のコスチュームがとってもカワイイ渡辺さんだった。主演俳優役には、演出部さんが大抜擢。現場でも笑いが絶えず、何とも不思議な面白シーンとなった。ラストシーンに向かうAVスタジオシーン。榎本役の光石さんオールアップ。長い待ち時間にもかかわらず、終始おだやかに現場にいてくださった光石さん。ひろみの近くにいる唯一の大人を見事な距離感で演じてくれた。

5月29日
高校の卒業式シーン。常総フィルムコミッションさんの協力と、一般応募の皆さんが高校生と父兄、教師役でたくさんのエキストラ参加をしてくれる。30歳を過ぎて高校生ができる永山さんに脱帽。渡辺さん、佐津川さんの高校生姿は、実にかわいらしかった。 さやかの部屋シーン。ひろみのAVを見ながら、ものすごい勢いでスナック菓子を食べた佐津川さん。かなりの集中力を要するお芝居部分で、髪や口のまわりにスナック菓子をつけたまま、セッティング替えを待つ姿がとても印象的。

5月30日
新潟の海シーン。強風のため一度撮影を断念したシーンの撮影。晴天まではいかなかったが、風もなく、無事撮影終了。このシーンをもって、佐津川さんオールアップ。ひろみとはまた違う、まじめで一生懸命なさやかを見事に演じてくれた。佐津川さんの新潟弁は本当にかわいく、さやかという役がとても印象深いものになった。タクシー・車内シーン。このシーンをもって、渡辺さんオールアップ。12日間の撮影も無事終わり、小沼監督からオールアップの花束が渡された。とても大変な役を、見事に演じてくれた。顔をクシャクシャにして「ありがとうございました!」と言ったときの涙が、とても美しかった。そして、お芝居部分のオールアップを迎えた小沼監督。「皆さんに借りたこの借りは、素晴らしい作品に仕上げて必ず返します!」と、力強い言葉。撮影中断っていたお酒とのことで、乾杯のビールを、とても美味しそうに飲んでいた小沼監督の笑顔が素敵でした。

5月31日
実景撮影をしクランクアップ。いろいろな条件が厳しい中、準備から撮影まで通して、ずっとおだやかで、文句や愚痴も一切聞こえてこないとても良い現場だった。

──『nude』の脚本を読んだ時の感想を教えてください。

みひろさんの道のりと自分自身が重なって、脚本を読みながら自然と涙が出ました。大変な撮影になるのはわかっていたけれど、直感的に「やる!」と決めたんです。

──みひろさんと自分が重なったというのは、どんな部分ですか?

みひろが女優になる夢に向かう姿ですね。ただ、撮影を終えてみひろさんが歩いてきた道やこれまでの体験ってすごすぎた、私と重ねるなんておこがましかったと、ちょっと反省しました(笑)。

──「大変な撮影」というのは、AVの撮影シーンが控えていたからでしょうか?

どの作品でも露出することにはあんまり悩みません。演技の中で、人生のひとつとして必要だからやる、という感覚です。『nude』の大変さは、ひろみとみひろの間で起こる微妙な心の変化をどう見せるかでした。同棲中の恋人や親友、マネージャー、大事な3人の前で見せる顔を使い分けて、さらに水面下で感情が揺れ動くのも表現しなくちゃいけない。それがすごく難しくて毎日毎日悩んでました。でも、脚本を初めて読んだときに涙がこぼれた感覚を信じて、同世代の女性にみひろの成長する姿を感じてほしいと願って必死に演じたのは確かです。

──みひろさんにご自身に、どんな印象を持ちましたか?

まっすぐ前を向いている方ですね。夢に向かう時に、自分で決めたら絶対後悔しないと信念を持っていますね。私も同じ考えなので、その点では役に近づけたかなと少し自信が持てました。みひろさんはお話もおもしろくて、AV撮影の前後に体を洗うシーンがあるので、体の洗い方を教えてもらいました。そしたら、「簡単ですよー、ボディソープをシュコシュコ手にとって、ここの毛(陰毛)で泡立てるの」って実演してくれたんです。みんなで大爆笑しちゃいました。

──渡辺さんにとって、本作が初主演映画となります。なにか、心掛けていたことはありますか?

撮影期間の2週間を本気でやり尽くしたかったので、現場に毎朝一番乗りしようと決めました。2週間くらい寝なくても人は死なないし、ご飯だってちょっと食べてれば生きているし、みたいな考えで、とにかく全部を映画に集中させたかったんです。芝居が未熟な分、現場に早く入るくらいはしたいって。
ただ、普通の女の子の話なので、体がやせすぎて病的に見えないようにご飯はちゃんと食べてました。胸が貧相なのに、やせると胸から肉が落ちるのもちょっといやだったし(笑)。製作のADさんがお弁当選びの達人で、ベテランスタッフも絶賛されるほどなんです。おかげで私も毎食おいしくいただいて、撮影を乗り切れました。

──小沼雄一監督とは初めての作品作りになりますが、かなり厳しく演技指導を受けたそうですね。

初主演を意識しすぎて、すべてがわざとらしい演技になっていたんです。「普通にやってみて」と監督から注文されても、「あれ、私ってどうやって日常を過ごしていたんだろう」と混乱しちゃって。撮影中に「そこらへんを走ってこい!」と言われたこともありましたし、「全然芝居ができてない」と、今までの自分を全否定されたこともありました。でも、自分でもその言葉に納得したし、逆にもう失うものは何もない、マイナスからのスタートだと腹をくくって役に挑戦できました。小沼監督って普段は穏やかでよく笑う方なんですよ。でも、チェックが厳しくて、私がロケバスでで休憩していたら、「ひろみは膝をくっつけて座らない!」とか「汚く歩け」とか注意されましたね。演技ができない分、常にひろみで居続けられるように監督が見張ってくれたんです。素の自分に戻っちゃダメだって。

──完成した作品を見て、感じたことはなんでしょう?

今までの自分の芝居とは全然違うのがとても新鮮でした。親友に仕事を辞めてほしいと言われるシーンで、「すごく楽しいし、辞めたくない」というセリフの裏に、言葉とは違う感情が見えたんです。その時、監督が「芝居するな」と言い続けた意味を理解できました。撮影は、細部を思い出せないくらい大変だったけれど、この作品に出会えて役者を続ける決意が強くなりました。
『nude』に出会えなかったら、甘い考えで進んでいったかもしれないところを、監督がドカンと雷を落としてくれたことで、表現する楽しさや苦しさを再確認できました。大げさかもしれないけれど、私の人生を変える作品になったと思います。監督には「こんなに根性のある女優は初めてだったよ」と言われたんですが、ほめ言葉なのかなぁ。たぶん、私って動じなさすぎるんでしょうね(笑)。

──『nude』映画化までのいきさつを教えてください。

小説を書いたのは、作家の新堂冬樹さんに勧められたからで、出版するあてはなかったんです。ちょうど書き終えた頃に講談社の方から「本を書きませんか」とお話をいただいて、「実はちょうど...」という感じでとんとん拍子で出版が決まりました。 映画化の話は去年12月頃にマネージャから聞きました。うれしい反面、「本当に映画になるかな」と半信半疑で、小沼監督とお会いしたんです。脚本を書くための取材を受けたんですが、「そこをつくか!」みたいな質問を浴びせられて、いい作品にしたいという熱意が伝わってきました。監督が持っていた本が、何度も読み返したせいでページの端が手垢で黒くなってたのがうれしかったですね。その後、すぐに映画化が正式決定したので、両親に連絡しました。

でも、うちの母親って天然で、「映画化?何それ」みたいな感じで。こっちはすごく感動してるのに、調子が狂っちゃった(笑)。親友にも、地元新潟でも公開するから、見に来てって誘ってあります。ちなみに、実際の親友はサバサバしてて、いつも応援してくれているんですよ。小説や映画のセリフは私の裏の心、自分が逆の立場なら思ったであろうことなんです。

──自分を演じる渡辺奈緒子さんとは劇中で共演していますが、渡辺さんの印象を教えてください。

衣装合わせが初対面で、ふたりとも偶然すっぴんだったんです。でも、奈緒子ちゃんはすっぴんなのにかわいかった。とにかく、目がきれい!

──渡辺さんにおしえてあげたことはありますか?

衣装合わせの時に奈緒子ちゃんが「セペ」(膣内を洗浄する使い捨てのビデ)を知らなかったから、どんな時に使うかとか、撮影前後にどうやって体を洗うかといった、現場的なことですね。それ以外にアドバイスはしてないけど、違和感は全然なかったですね。私がみひろと命名するときの奈緒子ちゃんの不安そうなたたずまいとか、まだマネージャとの間に壁がある雰囲気には、私もこうだったなとハッとしました。

──マネージャや親友、恋人といった実在の人物を、他の人が演じていますが...。

マネージャとは偶然スカウトされてから9年も一緒に仕事をしていて、今回の映画化のためにゼロから動いてくれました。仕事の悩みが相談できる、唯一の存在なんですが、残念なことに、実際は光石研さんみたいに素敵じゃなくて、アイスの「ガリガリくん」に似てます(笑)。
親友のさあちゃんを佐津川愛美さんが演じていますが、AVを見ながらお菓子をやけ食いする場面はすごい迫力でした。小説にはないシーンなので、こうやって怒りを表現するのかと斬新だったし、インパクトがありますね。彼氏は小説と映画ではいい人になってるけど、実際は監督も驚くほどのだめんずでした(笑)。永山たかしさんと初めてロケバスでお会いしたときに、「なんで本人がここに!?」と焦ったくらい、雰囲気がそっくり。監督には写真を見せてないのに、どうやってあんなに似てる人をキャスティングできたのか不思議です。

──完成作を見て、改めて思い出したことはありますか?

AV撮影を終えたあと、家で彼氏に体を触られるのいやだったなーとか、すごく悩んでたなって当時を思い出して切なくなる。予告を見るだけでボロボロですよ(笑)。特に、みひろがマネージャに、「AVすれば事務所が儲かるでしょ」と本音を吐き出して怒る場面がリアルで、私の胸にもグサッと刺さりましたね。
今振り返ると、AVに出ると決断してよかったと思うけれど、その当時は悩んだし苦しかったし、辞めようとも思ったこともあるし...。一方で、こんなに決断してAVをやるんだから、1番にならなきゃ意味がないと決意したことも思い出しました。そのくらいの意気込みでやらないと心が折れるというか、なんでこんなことしてるんだろうとへこんじゃうから。ここで1番になる気合いがないと、テレビや映画で女優としてやっていけないぞと、自分を奮い立たせてました。

──最後に、メッセージをお願いします

女の子の心を大事に作ってくださった映画なので、女性に見てほしいんです。過激な描写が多そうと敬遠しないで(笑)!AVの撮影シーンもあるけど、やってる行為に抵抗を感じるんじゃなくて、ヒロインに共感するからこその衝撃があると思います。映画の設定は特殊だけど、彼氏との関係や親友とのケンカって誰にでもあるし、マネージャを上司に置き換えてみると、職場の人間関係で参考になることがあるかもしれませんよ。この映画を見て、一歩踏み出すなにかを感じたり、明日からがんばろうと思っていただけたらうれしいです。

──『nude』映画化のいきさつを教えてください。

ほんとうに偶然なんですが、みひろさんのマネージャーさんの弟が僕の助監督だったんですよ。去年11月頃にその助監督から、「兄が『nude』を映画化しようとしているがツテがない」と相談されて、原作を読んでみたらおもしろい。そこで私が製作会社を紹介したら、とんとん拍子に映画化が決まったんです。

──映画化の話の前に、みひろさんを知っていましたか?

小説を書いていたことは知らなかったんですが、彼女の出演作は観ていて、いつか自分の映画に出てほしいと考えていました。「ゴッドタン」での迫真の演技は有名で、業界内では実力派女優としてすでに知られた存在でしたね。ご本人にお会いしたのは昨年12月上旬で、脚本執筆の参考にするためあれこれ質問しました。朝起きたら何をするんですかとか、自炊しますかとか、日常の様子からその人の素の部分がわかったりするんですよ。思ったより天然の人、というのが第一印象でしたね(笑)。

──原作を脚色する際に、苦労した点などはありますか?

彼女が自分の思いを伝えるために書いたと強く感じたので、原作を大事にしようと思いました。原作を何度も読んで、彼女自身が書いたセリフや地の文を脚本に活かそうと考えたのです。でも、私が書くと、どうしてもマネージャー視点の話になっちゃうんです。自分はおっさんだから(笑)。そこで、うちのカミさん(共同脚本の石川美香穂)にお願いして、若い女性の視点になるよう手を加えてもらいました。原作にないエピソードの大部分は彼女のアイデアです。

──主演のキャスティングについて教えてください。

脚本がある程度できた時点で主演女優候補をリストアップし、その中から渡辺奈緒子さんに決まりました。AV女優の役は若い女優さんにとってハードルが高いので、主演女優が決まるのに半年ぐらいはかかるだろうとのんびり構えていたのですが、あっさり決まっちゃって焦りましたね(笑)。逆にAV男優役のキャスティングは苦労しました。AV男優という役にみんな尻込みしちゃって...。そういう点では、女優の方が度胸がありますよ。

──監督から見た渡辺奈緒子さんは、どんな女優さんでしたか?

彼女は、私が会ってきた若い女優さんの中で、いちばんタフでした。はじめ彼女は、みひろさんの小説にとても共感できると言ったんです。でも、渡辺さんはAV女優なんてやったことないわけですから、そんな上っ面の共感では困るわけです。それを彼女が自覚し、もう一段階深く役を自分に引き寄せられるかどうかが今回の勝負所でした。初めに会った段階で、渡辺さんは勝ち気で根性もあるとわかったんで、現場では厳しく追い込みました。撮影二日目に冒頭のAV撮影シーンを撮ったんですが、撮影後に彼女が「AVという仕事は、演技の延長で脱ぐ芝居とは全然違う。想像以上に大変なことだ」と話してくれました。それを聞いて、渡辺さんの役作りが本格的に始まったと私は感じました。 みひろとマネージャーがAVをやるかどうかで激しく応酬する場面では、渡辺さんに相当なプレッシャーを与えました。ベテランの光石研さんと対等に渡り合って欲しかったからです。半泣きになりながらも、下を向くことなく演技を続ける彼女の強い眼差しが今でも忘れられません。

──AV女優が主人公の映画ですが、映画のカラーは明るく統一されてるのが印象的です。

今回は、男性目線で見るAVの映像ではなく、女性の視点で描く内省的な映画なので、扇情的なピンク色は画面から排除しました。特にAVシーンがそのままAV画面のような映像になることは避けたかったので、撮影手法も含めて気を使いました。ベッドのシーツをピンクや白ではなく水色にしたら、AV指導で参加してくれた本職のAV監督が、 「水色だと扇情的じゃないってクライアントからクレームが来ることがある」と指摘したんです。それを聞いて私は、これでいいんだと確信しました。

──監督が『nude』に込めたメッセージはなんでしょうか?

祈りの映画にしたかったんです。ひろみと、親友さやかにとっての。女優になりたいとか、幸せな人生でありたいとか、親友といつまでも仲良しでいたいとか...そういう素朴な二人の願い。誰しも若い頃に人生の選択を迫られる時がありますよね。その選択が結果として正しかったとか間違っていたとか、他人に言われることもあるだろうし、あるいは自分であのときの判断はどうだったかと考えることもあるでしょう。ただ、ある一人の女の子がいたとして、その子が誰にも頼らずに一生懸命考えて決断した選択を、一方的に否定したり、軽んじたりしたくないんです。自分が信じる道を必死に生きている姿は無条件に尊いし、美しい。あがきながらも前に進もうとする、彼女のありのままの姿をぜひ見て欲しいと思います。

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品番:BIXJ-0028
発売日:2011/01/07
画面:16:9[Hi-Def1080i]
音声:1.日本語ドルビーTrueHD2.0chステレオ
   2.日本語ドルビーデジタル2.0chステレオ
   (オーディオコメンタリー)
公開日:2010/09/18
製作国:日本

特典

【映像特典】
○メイキング(約20分) ○舞台挨拶(約11分) ○劇場予告編(約2分) 合計 約33分

【音声特典】
○オーディオコメンタリー<小沼雄一監督、渡辺奈緒子、みひろ>

商品詳細

品番:BIBJ-7986
発売日:2011/01/07
画面:16:9LB
音声:1.日本語ドルビーデジタル2.0chステレオ
   2.日本語ドルビーデジタル2.0chステレオ
   (オーディオコメンタリー)
公開日:2010/09/18
製作国:日本

特典

【映像特典】
○メイキング(約20分) ○舞台挨拶(約11分) ○劇場予告編(約2分) 合計 約33分

【音声特典】
○オーディオコメンタリー<小沼雄一監督、渡辺奈緒子、みひろ>

商品詳細