1950年代の西テキサス。田舎町セントラルシティの保安官助手ルー・フォードは、物腰が柔らかくて愛想がいいと評判の青年だ。29歳の彼は町で唯一の医師だった今は亡き父親の屋敷を相続し、エイミー・スタントンという幼なじみの女性教師との気ままな逢瀬を重ねている。油田の開発で潤った町の治安はそれなりに保たれ、ルーの日常も穏やかそのものだった。ジョイス・レイクランドという娼婦とめぐり合った、この日までは。
上司である年老いた保安官ボブから、ジョイスの売春行為に対する市民の苦情処理を任されたルーは、彼女の自宅に赴いた。ジョイスはルーを客と思い込んでリビングルームに招き入れるが、彼が保安官だと知るや突然気色ばみ、「薄汚いイヌ野郎!」と罵り出す。暴れるジョイスをベッドにうつ伏せに押さえつけたルーはベルトを手にし、彼女の尻を叩いた。ありったけの力で、何度も何度も青あざができるほどに。やがてルーが「悪かった」と詫びると、欲情したジョイスは自らキスを求め、ふたりは激しく愛し合う。このときルーの心の奥底で、20年間眠っていた悪魔のような衝動が目を覚ました。
これ以来、ジョイスとの情事が日課になったルーは、彼女から思わぬ話を持ちかけられる。ジョイスに夢中になっているエルマー・コンウェイを引っかけ、金をむしり取ろうというのだ。金持ちのボンボンのエルマーは、ルーの元同級生である。そして彼の父親チェスターは地元建設業界を牛耳る顔役で、6年前にルーの義兄マイクをあの世送りにした疑いのある人物だ。マイクを実の兄のように慕っていたルーは、遠い昔の忌まわしい出来事を思い出す。ルーが少年時代にある重大な罪を犯したとき、マイクが彼の身代わりとして感化院に入ってくれたのだ。
復讐の念に駆られたルーは、チェスター&エルマーのコンウェイ親子を罠にはめる準備を手際よく整え、作戦決行当日の夜、エルマーよりひと足早くジョイスの家を訪れた。そして自分が惚れ込んだ女であり犯罪の相棒でもあるはずの彼女の顔面に、突然痛烈なパンチを浴びせる。「すぐ終わる。すまない。愛してる」。そう囁きながらジョイスが息絶えるまで容赦なく殴り続けたルーは、何も知らずにやってきたエルマーを射殺し、その拳銃をジョイスの手に握らせた。すべてはルーの思惑通りだった。
しかしジョイスとエルマーの“相討ち”を偽装したルーの完全犯罪は、想定外の方向へと転がり出す。何とジョイスが意識不明ながらも、奇跡的に命を取り留めていたことが判明。さらに事件を担当する腕利き検事ハワードがルーに疑いの目を向け、ルーとチェスターの因縁を知る建設組合長ロスマンも意味深な言動でルーを苛立たせる。まもなくジョイスは移送先の病院で息を引き取ったが、ルーの脳裏にはまたもトラウマが甦った。それはまだあどけなかった頃、自宅に出入りしていた若い家政婦との淫らな関係。この家政婦こそが、ルーのその後の人生を狂わせるきっかけとなった初めての“女”だった。
なおも事態は意外な展開を見せていく。事件の容疑者として、ルーもよく知る地元の若者ジョニーが逮捕されたのだ。裁判所の薄暗い拘置室に出向いたルーは、このままジョニーに罪を被せることにし、首吊り自殺に見せかけて彼を殺害した。ところがルーが以前ヤケドを負わせた流れ者の男が自宅に現れ、犯罪の口封じ代を要求されるという新たな難題が持ち上がる。それからルーはジョイスのことを思い出しながら、毎日のように愛人エイミーとベッドで戯れ合い、つかの間の心の安らぎに浸るのだった。
かくして流れ者の男に金を渡す日がやってきた。またこの日は、結婚を誓い合ったエイミーに駆け落ちを実行しようと約束した日でもあった。すでにジョイス、エルマー、ジョニーを殺したルーは、もうとっくに決意を固めていた。自分の内なる衝動に従って、さらなる殺人を重ねることを……。
