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奇跡のひと マリーとマルグリット

19世紀末のフランス・ポアティエ。聴覚障がいをもつ少女たちのための学院を併設する修道院に、生まれつき目も耳も不自由な少女マリーがやってくる。しつけと教育を一切受けずに育ってきたマリーは野生動物のように獰猛で、誰にも心を開かない。不治の病を抱え、近づく死の気配を感じながら日々を過ごす修道女マルグリットは、ひとめ見た時からマリーが放つ強い魂の輝きに導かれ、自らマリーの教育係を申し出る。限られた時間のなかで彼女に「世界」を与えようと、むきだしの魂がぶつかりあう「戦い」と呼ぶべき教育が始まった。ものには名前があること、身だしなみを整えること、食べる時はナイフとフォークを使うこと……何一つ知らないマリーに根気強く向き合うマルグリット。進歩がない日々にマルグリットが限界を感じ始めたある日、ついに奇跡が起きる。言葉の存在を、マリーがついに理解したのだ! 言葉によって他者と心を通わせ、気持ちを相手に伝えることができると知ったマリーは、深い愛情とともに学ぶことの喜びを与えてくれたマルグリットと強い絆で結ばれてゆく。だが、マルグリットの“命の期限”はすでに目前に迫っていた――。

本作は、三重苦で生まれた女性マリー・ウルタン(1885~1921)と、彼女を教育したシスター、マルグリット、共に実在したふたりの女性による真実の物語。「三重苦の女性と、彼女を支える教育者」といえばヘレン・ケラー(1880~1968)とサリバン先生の物語が有名であるが、後天的な病気によって視力・聴力・言葉を失いサリバンをはじめ複数の教師から教育を受けたヘレン・ケラーとは異なり、本作のヒロイン・マリーは、生まれつきの三重苦であり、彼女を教育したのは献身的な修道女、マルグリットただ一人であったという。
不治の病を抱えながら、人として生きる喜びと尊厳、そして死をマリーに教えたマルグリット。母のように惜しみなく愛を注ぎ、知識を分かち、命をつなぐ――。彼女が身をもってマリーに示したのは、人としての営みそのものだった。「喪う悲しみ」より多くの「生きる喜び」を与えたマルグリットの遺志を受け継いだマリーが、「いつもあなたを想っている」とマルグリットの魂に語りかけるラストシーンでは、手話がもたらす言葉以上の豊かさ、彼女の笑顔がもたらす希望の光に、誰もが心をうたれるに違いない。

マリーを演じたのは、自身も聴覚にハンディキャップを抱えるアリアーナ・リヴォアール。彼女は、マリー役をろう者、もしくは全盲の少女に演じてもらおうと考えていた監督のジャン=ピエール・アメリスによって見出され、本作で映画デビューした期待の新星で、前半部分では野性児のようなマリー、言葉を知った後半部分ではいきいきと表情豊かなマリーを、それぞれ見事に演じた。
また、物語の舞台となっているのは、フランス・ポアティエ近郊にあるラルネイ聖母学院で、ここはラルネイ英知会という修道院によって 1835年に創設され、1世紀半を経た今も、耳が不自由な人たちのための施設として現存している。1895年、10歳の時にやってきたマリーは、ゲーム、縫い物や編み物のほか、読み書きも覚え、その後もここにとどまって後輩たちを指導したという。
劇中では、マリーとマルグリットら修道女たちの学院および修道院での生活も垣間見られる。素朴だが清潔な服、自給自足のつましい食生活など、まったく無駄のないシンプルなその暮しぶりは、マルグリットの教えと同様、人として生きることの真の豊かさとは何か? を私たちに語りかけてくれる。

聴覚障がいのある少女たちを教育するラルネイ聖母学院に、ある日、薄汚れたぼろを身に纏い、髪はぼさぼさの女の子が父親に連れられてやってきた。目が見えず、耳も不自由だという彼女は、父親が目を離したすきに園庭を駆け回り、ついには一人で木の上によじ登る。この騒ぎを見た学院長は、「当校は聾唖の娘たちの学校。聾唖で盲目となると私たちの手に負えない」と父娘を帰してしまう。
だが、木に登ったマリーを降ろそうと彼女の手に触れた修道女のマルグリットは、マリーが放つ強い魂の輝きに惹かれ、彼女を学院で預かり教育係になりたいと院長に訴える。手話もできない彼女にどうやって教育するのかと渋る院長を説得し、マルグリットはマリーを学院へと連れてくる。

生まれてきてからこれまで、しつけも教育も一切受けていないマリーへの、「戦い」と呼ぶべき教育が始まった。
着席しての食事を嫌い、ナイフとフォークももちろん使えない。野生動物のようにお風呂を嫌がり、新しい服に着替えさせるのも至難の業。4か月が過ぎても、進歩がないばかりか、むしろ後退を感じ焦るマルグリットだったが、徐々に入浴やブラッシングにも慣れ、食事の時にはナイフとフォークが使えるようになり、ブランコで遊ぶこともできるようになっていく。しかし、物には名前があるということがなかなか理解できない。マリーが実家から持参したお気に入りの小さなナイフを握らせ、同僚たちにバカにされながらも、根気強く“ナイフ”の一言を教えようとするマルグリット。

マリーがやってきて8か月目、ついに奇跡が起こる。ふとしたことから、ようやくマリーは、“ナイフ”が“ナイフ”であることを理解したのだ。最初の1語こそ苦労したものの、その後は単語、形容詞、抽象語、文章、文法と、言葉を次々と精力的に会得していくマリー。面会にやってきた両親に自分の名前のスペルを正しく並べ「愛している」と手話で語りかける娘の姿に、父と母は驚き、感激の涙を流した。

学ぶことの喜びを知り、日に日に成長するマリーと、母親のように惜しみなく愛情を注ぎ、教育を続けるマルグリット。ふたりの絆はより強いものとなった。もともと体が弱く不治の病をわずらうマルグリットは空気のよい場所での静養を命ぜられるが、医者の反対を押し切ってマリーと共に生きることをあらためて誓う。

しかし、ふたりの別れの時間は刻々と迫っていた――。

1971年5月28日、フランス・パリ生まれ。89年、コリーヌ・セロー監督の『ロミュアルドとジュリエット』で映画デビュー。93年のクリスチャン・ヴァンサン監督「Beau fixe」で主演し、セザール賞有望若手女優賞にノミネートされ注目を集めた。2003年にはザブー・ブライトマン監督『記憶の森』での演技力が高く評価され、セザール賞主演女優賞に輝いた。出演作はそのほか、フィリップ・アノレ監督『視線のエロス』(98)、ジャン・ベッケル監督『クリクリのいた夏』(99)、レティシア・コロンバニ監督『愛してる、愛してない…』(02)、セドリック・カーン監督『チャーリーとパパの飛行機』(05)、リュック・ジャケ監督『きつねと私の12か月』(07)、フランソワ・オゾン監督『ムースの隠遁』(09)などがある。

1995年3月4日、フランス・オーヴェルニュ生まれ。マリー役をろう者、もしくは盲者の少女にオファーしようと考えていた監督のジャン=ピエール・アメリスによって見出され、本作で映画デビューした期待の新星。耳が不自由な彼女はフランスのサヴォワにある国立聾学校の寄宿生で、バカロレア(大学入学資格)を取得している。演技は初めてだったアリアーナだが、彼女を見出した本作アメリス監督をして「彼女が演技ができるかどうかはどうでもいいこと、彼女にはマリー・ウルタンが持ち合わせていたに違いない"快活さ"と"強さ"があると感じた。」と言わしめた。

1961年7月26日、フランス・リヨン生まれ。監督作に、「LES AVEUX DE L'INNOCENT」(96)、『デルフィーヌの場合』(99)、「C'EST LA VIE」(01)、「POIDS LÉGER」(04)、本作でシスター・マルグリットを演じたイザベル・カレをヒロインに起用した「LES ÉMOTIFS ANONYMES」(10)など。

品番:BIBF-2770
発売日:2015/12/02
価格:3,900円(税抜)
画面:16:9LBビスタサイズ
字幕:日本語字幕
音声:
1.フランス語ドルビーデジタル5.1chサラウンド
2.日本語ドルビーデジタル5.1chサラウンド(吹替)
3.日本語ドルビーデジタル2.0chステレオ(吹替+音声ガイド)
公開日:2015年06月公開
製作国:フランス
製作年:2014

【映像特典】
・メイキング
・アリアーナ・リヴォアールのインタビュー
・日本語版予告

商品詳細